□不器用な愛情表現
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「……それは跡部が悪いよ」

「アーン?何でだよ」

「ま、オメーの気持ちも分からなくはねぇけどな。ロマンチストな忍足君にとっちゃあ不満だったんじゃねぇの?」

「……意味分かんねぇ」


仕方なく忍足との出来事を二人に説明してやると、萩之介は呆れた様子で、ジローは欠伸混じりで答えた。
つうかジロー、テメェ散々笑った癖にその態度はねぇだろ。
そんなジローに苦笑しながら、萩之介が優しい口調で話し始める。


「きっと忍足はバレンタインを跡部と一緒に楽しく過ごしたいんだと思うよ?」

「はぁ?下らねぇ」

「もう。跡部の悪い癖だよ、それ」

「………」

「もうちょっと忍足のこと考えてあげてよ。恋人らしいことしてくれないっていつも愚痴られるのは俺なんだからね」

「……ハイ」


柔らかい話し方だが、有無を言わせない萩之介に俺は大人しく従うしかない。
そんな俺にジローは指差して笑う。
お前明日メニュー倍にしてやっからな。


「そうだ!跡部からチョコ渡したらどう?」

「ハァ?!何でだよ!?」

「だって、跡部の気持ちを示すチャンスじゃない」

「おー、そりゃ名案だ」

「ジロー、他人事だと思いやがって…!」

「だって他人事だC」

「……テメェ」

「まあまあ、二人とも落ち着いて」


妙な提案を出した萩之介が仲裁に入るが、元はと言えばお前が悪いんじゃねぇか。


「とにかく!チョコをきっかけに謝れば良いんじゃない?素直じゃないんだから、口で謝れないでしょ」

「イヤ俺悪くねぇし」

「……跡部?」

「……わかったよ」


笑顔全開の萩之介に俺は黙って従うしかなかった。
コイツの満面の笑みは何か恐ろしいもんを感じるんだよな。
反抗出来ねぇ自分が情けなくてしょうがねぇけど。

こうして、俺は全く不本意ながらチョコを作る嵌めになってしまった。



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