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「お。凄ぇな、これ」
「前に温泉好きやって言うてたやろ?しょぼくて申し訳ないんやけど…」
「イヤ、全然しょぼくねぇよ。嬉しいプレゼントだ。サンキュ」
何でも手に入れてしまえる跡部に何を贈って良いか分からず、前に温泉にハマっているっていうのを思い出して、全国の有名な温泉の入浴剤セットにしてみた。
喜んでくれるか不安で仕方なかったが、嬉しそうにしている跡部を見てホッとした。
「俺もお前に渡す物がある」
「え!?跡部も?!」
「……そんなに驚かなくてもいいだろ」
まさか跡部もプレゼントを用意していたとは思わなかったので、心底驚いた。
そんな俺にちょっとムッとした跡部は、ぶっきらぼうにプレゼントを渡した。
「開けてもえぇ?」
「……ん」
そっと綺麗な包装紙で包まれたそれをそっと開けると、中からDVDが出てきた。
「これ…」
「前にCM見て、この映画観たかったけど観れなかったって言ってただろ?」
「………」
「……もしかしてもう持ってんのか?悪ぃ、正直何選んで良いか分かんなくてよ」
「ううん、持ってへんよ。ありがとう…」
「……おう」
貰ったのはずっと観たくてしょうがなかったラブロマ系の映画DVD。
確かにこのDVDがCMで流れてた時、ポツリと観たかったヤツだって言ったような気がする。
言った本人があやふやな、何気ない一言を跡部が覚えていてくれたのが純粋に嬉しかった。
「ケーキ食べ終わったら、一緒に観よな?」
「ラブロマ系苦手だからパス」
「お風呂、その入浴剤入れてもえぇから」
「……チッ」
登別の入れるからな、と言って切り分けてあげたケーキを食べ始めた跡部。
えぇよと言って俺もケーキを食べる。
ケーキも甘いけど、俺らを包む雰囲気も同じくらい、イヤそれ以上に甘く感じた。
こんな日がずっと続いたら良いな。
そう思いながら口にした苺は少し甘酸っぱかった。
FIN