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「いらっしゃい…」
「飯は?」
「出来とるよ」
インターホンを鳴らすと笑顔で迎えてくれた忍足の横を通り過ぎ、ずかずかと中に入りリビングへ向かった。
何度も通っている為、自宅と同じくらい使い勝手がわかっている。
「はい、どうぞ」
「ん」
食卓に着くと、目の前にシチューが差し出された。
出来たてなのだろう。
ほかほかと湯気が立っている。
身体の芯まで冷えてしまっていた為、これは凄く有り難い。
黙々と食べていると、こちらをジッと見つめてくる視線に気がついた。
二人しかいないこの空間。
誰の視線かなんて考えなくてもわかる。
「……何だ」
「え、あっ…頬っぺ、赤くなっとるから…」
「あぁ、これか」
苦笑いをする忍足の答えに、俺は殴られた事を思い出した。
結構な力で打たれたんだ。
赤くなっていてもおかしくない。
「また女の子怒らせたん…?」
「……あぁ」
「いつも言うとるやろ?女の子には優しくせなアカンって」
「うるせぇ。お前には関係ないだろ」
「……そうやけど…」
ホテルでの出来事と余計なお節介を掛けてくる忍足の二重の苛立ちで、発する声も言葉も棘のあるものになった。
急降下していく俺の機嫌を察した忍足は、そのまま何も言わず黙ってしまった。
気まずい雰囲気が二人を包む。
それを払拭する為か、忍足はリモコンでテレビの電源を入れた。
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