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□とっておきの日
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「あ、あと「キャー!!跡部様ー!!!」
朝。
目当ての人物を見つけ、声を掛けようとすると、女子たちの黄色い声にかき消されてしまった。
あっという間に校門前は人だかりが出来てしまい、跡部の姿は見えなくなってしまった。
今日は跡部の誕生日だ。
メールでお祝いのメッセージを送ったが、やはり直接言いたくて、朝早くから校門の前に立って跡部を待っていたところだ。
そんなことを考えているのは俺だけではなかったのか、俺が学校に着いたときには既に跡部待ちの女子たちが沢山いた。
跡部はモテる。
眉目秀麗、頭脳明晰、スポーツは何をやらせても万能で、特にテニスは全国レベルで。
その上家は金持ちだし、生徒会長までも簡単にこなしてしまうカリスマ性。
だから、彼の誕生日を祝いたい子やこれを機会に跡部と関わりを持ちたい子等々…
そんな子は大勢いる。
俺だってその中の一人だし。
「朝っぱらからウルセーな。静かにしろよ」
「キャー!!!!」
面倒くさそうに溜め息を吐く跡部に、女子たちは更に黄色い歓声を上げる。
確かに悩ましいもんな。
「(しゃーない。部活まで我慢しよ…)」
明らかに迷惑そうにしてる跡部に声を掛けられるほど、遠慮がないわけではない。
プレゼントは部活のときに渡そう。
「(早く渡したかったんやけどな…)」
そのままそっと校舎へ足を向けようとすると、後ろから声が掛かった。
「オイ待て忍足!」
「え…?」
「チッ、つーか邪魔だお前らどけろ!」
女の子の集団を掻きわけ、跡部が乱暴に俺の腕を掴まえた。
「あと、べ…?」
「テメー、逃げるなんて良い度胸じゃねぇか」
「え?え…?」
訳がわからず挙動不審になる俺に、跡部はニヤリと不敵に笑う。
あ、その笑顔格好えぇな
「何か俺様に言うことあんじゃねーの?」
「えっと…、誕生日おめでとう…?」
「フ、やれば出来るじゃねぇか」
満足したのか、跡部は俺の腕を放し、スタスタと校舎の中へ入って行った。
「??」
何がしたかったのか分からず、ポカンとした俺は置いてけぼりを食らった。
「何やったんやろ…?」
実は俺の気持ちなんてとっくにバレていて、また跡部も俺と同じ気持ちだったと知るのは、放課後になってからだった。
FIN
俺様×控えめでした