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□恋が愛に変わるとき
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「あっ、また間違えた…」
溜め息を吐いて、もう一度本の説明と睨めっこする。
目の前には見本とはかけ離れた見栄えの悪い膝掛け。
何度も編み物の本の説明を熟読するが、上手くいかない。
これほど自分の不器用さを呪ったことはない。
「滝に訊くしかあらへんな…」
何回見ても分からず、作りかけの膝掛けと編み針を投げ出した。
「……間に合うんやろか…」
12月のカレンダーに大きく丸が付けられている24日を睨みつける。
きっかけは同じクラスの滝の何気ない一言からだった。
【恋が愛に変わるとき】
「え?嘘やろ…?」
滝の言葉が信じられず、俺は思わず聞き返してしまう。
滝は困ったように笑いながらもう一度繰り返した。
「ホントだよ。今年のクリスマスは各自それぞれで過ごすんだって」
「そんな…」
毎年クリスマスは、テニス部のレギュラー陣で集まって簡単なパーティーを開くことになっている。
しかし、今年は急遽中止になったと、目の前に座る滝の口から告げられた
「多分、跡部の配慮なんじゃないかな?今年は高校最後のクリスマスなんだから恋人と過ごせって、宍戸と岳人に言ってたし。ジローも最近出来た彼女と過ごしたかったみたいだし」
「……そうか…、確かにせやね…」
そうだ。
恋人がいながら二人きりで過ごすことなく、毎年付き合ってくれた宍戸と鳳、岳人と日吉には悪いと思っていた。
俺たちにとって今年は高校最後のクリスマスなのだ。
今年くらいは恋人同士で過ごしたほうがいいだろう。
来年は離ればなれになってしまうのだから。
幸い俺たち全員大学の入試は推薦で合格しているから受験の心配はない。
「忍足はどうするの?」
「え?」
「跡部と、過ごしたいんじゃないの?」
「………」
滝の言葉が胸に響く。
跡部は、俺が中学校の頃から片想いをしている相手だ。
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