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□続・不器用な愛情表現
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3月も半ばに差し掛かった今日この頃。
学校は休み、部活も午前中で終わり。
午後の時間を有意義に過ごそうと、俺の家で跡部と二人でまったりしていた。
何でもない普通の休日だけど、少しだけ特別な日。
だって今日はホワイトデーだから
「……なぁ、」
「んー?」
「これ、俺も観んのか?」
「おん。せやでー」
ずっと見たかったラブロマ映画のDVDをセッティングしていると、後ろから溜め息が聞こえた。
それを無視して座っている跡部の足の間に体を割り込ませる。
後ろから抱きしめられる態勢をとった。
「ったく何で俺まで…」
「やって約束したやんか」
「………」
ブツブツ文句を言う跡部を一蹴する。
そう、だって約束したのだ。
今日はホワイトデーだから、お互いの言うことを一つだけ聞こうって。
先月のバレンタインは二人共チョコを渡した為、ホワイトデーは贈り物はなしになった。
その代わり、互いの言うことを聞くことにしたのだ。
跡部はまったりのんびり過ごすことを、俺は見たかった映画を観ながら二人でイチャイチャすることを望んだ。
だから今こうして二人っきりの時間を堪能している。
不平不満を言っていた跡部も、何だかんだ言って俺の体に腕を回して抱き寄せてくれた。
バレンタインの一件から、二人の距離が縮まった気がする。
それが嬉しくて、ちょっと擽ったい。
そのまま再生ボタンを押して、映画を観始めた。
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「……ふぁ…」
「眠いん?」
「ん…」
後で欠伸をする跡部に目線を画面に向けたまま話し掛けると、間の抜けた返事が聞こえた。
どうやら相当眠いらしい。
それもそのはず。
ラブロマ系なんて、跡部にしてみれば全く興味のないジャンルなのだから。
眠くなるのも無理ない。
「寝てえぇで?」
「………」
「あら、もう寝てしもうたか」
すやすやと聞こえる寝息が首筋に掛かって擽ったい。
けどそれがどこか心地良かった。
「おやすみ、跡部」
「んぅ…」
「……好きや」
肩に凭れ掛かった跡部の頭に小さくキスを落とす。
抱きしめる腕の力が少し強くなった気がした。
映画はもうすぐクライマックス。
溢れた一滴の涙は、決して映画だけのせいじゃない。
豪華なプレゼントも料理もないけど、それらに引けを取らないくらい幸せなホワイトデーだった。
FIN