□不器用な愛情表現
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「ギャハハハ!」


目の前で笑い転げるジローを睨み付ける。
腹を抱えて涙を流すこの男が、今の俺には腹立たしい事この上ない。


「お前笑い過ぎ。いい加減にしろ」

「だってオメーのその顔傑作過ぎ。マジ笑える!…ククっ…」

「………」

「もう、ジロー止めとこ?跡部怒ってるよ」


ジローの傍で静観していた萩之介がやんわり止めに入る。
そしてニコニコと笑顔で、その頬っぺたどうしたの?と尋ねた。


溜め息を吐き、渋々先程あった出来事を話し始めた。

それは今から2時間前の事だった。







【不器用な愛情表現】







「もうすぐバレンタインやね?」

「あ?」


放課後。
この時間はいつも忍足が俺の教室まで迎えに来る。
忍足と付き合うようになってから、これは習慣の一つになっている。
俺としては、部活ですぐに会えるんだしわざわざ迎えに来なくても別に良いじゃねぇかと思うが、忍足は少しでも時間を共有したいらしい。

今日も通常通り迎えに来て、二人で部室に向かう途中、忍足が嬉しそうに笑いながら言った。
唐突な言葉に若干面食らったが、そう言えばもうそんな時期か、とうんざりしてしまう。

バレンタインは俺にとって苦痛なイベントでしかない。
知らない女どもの大群に襲われ、こっちの都合なんてお構い無しにチョコを押し付けてくる。
苦痛で、下らなくて、無くなればいいと思っている行事だ。

だから楽しそうにしている忍足に少し、イヤ大分驚いた。



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