こっそり。

□午前0時00分。−最愛−
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10月11日 午前0時。




「悪かったな遅くなっちまって…」

二人は、新八からもらったケーキを食べている。

「ほれ…」

土方は、銀時にケーキを食べさせながら、嬉しそうに食べるその姿を見ていた。



「そーいや新八は??」
銀時は、もぐもぐしながら、今度は土方にケーキを食べさせる。

「…甘。……アイツならさっき外で会って俺にケーキ渡してから自分の家帰ったぜ。」
土方は、甘いものは苦手だと言いながらも、「アーン」とやってくる銀時が可愛くて、ためらいつつもケーキを食べていた。

「あら。そうだったの…」
土方はまたケーキを銀時の口に持っていく。

「お前の誕生日俺に教えてくれたのもアイツだし。…たく、良くできた部下だなぁ。」

「うるへー…」
銀時はケーキを頬張りながら照れた様子で言った。




いつの間にかもう最後の一口だ。

土方の皿に残った生クリームまみれのいちご。
銀時は、早く早くと言わんばかりに口を開けてスタンバイしている。

土方はフォークでいちごを刺すと銀時の口元に持っていった。

しかし、様子がおかしい。
土方は、
「もっと美味しくしてやるよ。」

と言ったとたんいちごを「パクリ」と食べてしまった。

「ッ!!!!!てめッ何しやがる!!俺のいちご返しやがれ!!」

銀時の喚いてる姿をニヤリと見つめ、土方が立ち上がろうとした。

その瞬間。
「銀サンのいちご返…ッ。」

テーブルに身を乗り出した土方は、片手で銀時の顔を引き寄せた。
「まぁ待てよ、今からやるから。」
そう言うと、銀時の唇に食いついた。


「っ!?」
いつもは煙草の味がするキス。

今回ばかりは、いちごの甘酸っぱい味が口の中に広がり、
その甘さに意識が遠のく。

フォークを握っていた右手からは力が抜け、
漂う右手は、空気を掴むように

ただ温もりを求めた。






「な、いつものいちごより美味かったっただろ?」
土方が笑みを浮かべた。

「…調子に乗んなよ。」
絡めた右手を軽く払うと、銀時は照れくさそうに目を伏せながら言った。



ところが、
次の瞬間、銀時は何かに気づいたのか、土方の顔をの覗くと、手を取り顔を近づけた。

「俺、もっと美味いの知ってんだ…。」

急に引っ張られよろめく土方に、銀時はキスするふりをして口の横に着いていたいちごを舐めとる。

「ごちそうさま。」
耳元で、吐息混じりに囁くと、
土方は突然の出来事に戸惑い、頬を赤らめたまま時が止まったように固まっていた。

「来るの遅かったから仕返しぃ!!」

銀時はそう言うと、食器を手に取り台所へ行ってしまった。


時刻は10月11日午前0時30分を過ぎたところ。





台所から戻ると、土方は遅くなってしまったことを気にしているのか、さっきの銀時の行動に照れているのか、頭をかいて俯いていた。


「…バカ、遅いなんて思ってねーよ。ウソだよウーソ!!」

「・・・。」

そうじゃなくて。

そうじゃなくて・・・


「その、、あれだ。何てゆうか………あ、ありがとな…トシ。」


「銀 時…。」
土方は顔を上げ、優しく微笑んだ。







プレゼントなんていらない。
無理矢理休みを取れ何て言わない。

会わなくてもいい。
と言ったらウソになるけど。



でも、
いつも羽織っているはずの上着、
今日はベストだけで、

捲り上げたままの袖は、左右ちぐはぐの高さで、

額に滲ませていた汗と、
乱れた呼吸。



―仕事…あったんじゃねーの??





自惚れても良いですか??
愛されていると。





今まで何てことなく過ぎていた日々、

だけと、土方の存在が毎日を特別なモノにしていった。

誕生日なんか今までどおでも良かったけど、
自分がこの世に生まれてきた日を、こうして祝ってくれる奴がいる。

死ぬほど会いたい。
と思った奴が、今目の前にいる。


こんな幸せなことはない。



時刻は10月11日午前0時40分。


土方は銀時をフワリと抱きしめた。


「ゴメンな・・・遅くなって・・・。」

「・・・。」
銀時は土方の腕の中で、首を横に振りながら必死で涙を堪えた。


遅いだなんて思ってねぇよ。
間に合ったじゃねーか。

時刻は、
10月10日、24時42分。



二人が眠りにつくまで、

10月10日はつづく。


今日は愛する人がこの世に生まれた日。
おめでとうよりも、


ありがとう




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