こっそり。

□午後11時30分から11時45分。 −前触ー
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「あーあ、あんだけ言ったのに何で会いに来ないかなぁ〜、…イヤイヤきっと仕事、忙しいんですよね…しょうがないか。」

午後11時30分。
コンビニで買ったケーキを片手に新八が歩いている。
このまま帰って、男二人で寂しくケーキを食べるのかと思うと何だか切ない気持ちになった。


屯所、寄っていこうかな…こうなったら無理矢理でも銀サンに会いに行ってもらうしかないか。


新八が、屯所の方へ行こうとしたその時だった、
こんな夜中に全力疾走でこちらに向かってくる人影を発見した。


「…?」


新八は眼鏡を手で押さえ目を細めその人影を見た。
「…!!土方サンッッ!?」


その人影は、真選組副長土方十四郎だった。

土方は新八に気付くと、息を切らしながら近くに寄ってきた。
「…アイツ…家にいるか……??」

「遅いですよ土方サン!!!!相当寂しがってますよ!!!」
新八は呆れたような顔で言った。

「あーもう時間ナイから!!!早く会いに行ってあげてください!!僕は家に帰りますから!!」

そう言うと新八は、コンビニで買ったケーキを土方に差し出した。

「…わりぃな。」

「はい行った行った!!あと15分ですよ!!………あっ!!」

再び走り出そうとした土方が足を止める。

「どうしたぁ?」

「神楽チャン、いつもの押入で寝てるんで!!すいません気が利かなくて…」


「…イヤイヤ………」

「…へ??」

土方はポケットから、おもむろに美少女フィギュアを取り出し優しく頭を撫でながら続けた。
「逆にいつも演出してくれてありがとうでござる。抵抗する坂田氏は可愛いでござるよ。なぁトモエ〜
では志村氏!!夜道には 気をつけるでござるよ〜!!」

そう言って土方は万事屋へと走り出した。



「……まだたまにトッシーなんですね土方サン。ってか演出って何!?誰かが居る的なスリル楽しんでるわけッッ!?何だよもう知りたくねーよそんなの…」


新八は呆れて自宅へ歩きだした。


でも、取り敢えず良かったか。
神楽チャンには悪いことしたけど、多分起きないから大丈夫!!!


しかし、銀サンは幸せ者だなぁ〜…
あんなに必死に走ってるとこ初めて見たよ。




肌寒い夜道、

他人の幸せを喜び、
思わず笑みをこぼしながら家路へと歩く。


時刻は、午後11時45分。
それは、幸せの前触にすぎない。


銀サンお誕生日オメデトウ。



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