こっそり。

□君に捧ぐ言葉。
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山崎は、無言で机に向かう土方を見た。

クリスマスだからって、相手にしてほしい訳じゃない。
でも一番近くに居るのは自分のはずなのに、
頼られもしないことに憤りを感じた。


(もっと寄りかかってくれてもいいのに……まぁ、取り敢えず今は、少し休憩させないと…。)

さて、
この、甘えることを知らない大きな子供を、
どうやって振り向かせようか。



「副長、少し休憩したらどおです??」
「…」
「仮眠でも取らないと体に悪いですよ!!」
「寝ないんだったら、何か食べるもの持ってきましょうか??」
「あぁ、そうだ!!皆宴会やってるし、副長も…」
「…」
土方は無言で山崎を睨みつけた。
「…何でも…ありま…」
「山崎ィィッッ!!」
大声と同時に、片手で思い切り机を叩いた。
「!!」
「テメェ…俺の仕事じゃましてんじゃねーぞ!!出てけッ!!」

(やべぇ…メチャクチャ怒らせちゃった…でもここで出ていったら意味ないし…ってゆーか、人の気も知らないで…!!!)
山崎は、キリリと目つきを変え、土方の肩を掴み自分へ向かせた。
同時に、机に置いてあった飲みかけのお茶を手に取る。
そして、意を決した山崎は、
「副長ッッ!!本当スイマセン!!こうするしかありませんでした…。」

「ッッ!?」

片手に取った湯呑みを土方の頭に持っていき、思いっきり逆さにした。
「テメッ何…。」
すでに冷えきっていた飲み掛けのお茶は、ビシャリと音をたて土方の髪を濡らした。
「…」
一瞬沈黙が流れる。
髪の毛からポタポタと滴るお茶の音だけ響いた。


土方が山崎を睨みあげる。
山崎は冷や汗を垂らし、ひきつった笑顔を浮かべ、ゴクリと唾を飲み込んだ。

「…山…」
「……副長!!あーあ、髪濡れちゃいましたね!!大変だぁ!!あ、お風呂でも入ってきたらどおですか!?お風呂!」
山崎はにっこり笑って土方を見た。
「ゃまざきぃぃッッ…何が風呂だ!!テメーがわざと茶ぁぶっかけたんだろうが!!!」
土方は山崎の胸ぐらを掴み、首がもげそうなほど激しく振った。
そして、やめたかと思うと今度はものすごい形相で睨みつけている。

しかし、山崎もここで怯んでるわけないはいかない。
(ここは何としてでも、お風呂にでも行かせて、机から離れさせなくちゃ…)



そう、
仕事は手伝えないが、そんな俺でもできること、


それは、
休むきっかけを作ること。



こんな事しかできないのだ。



「ふッ、副長…髪、ぬッ濡れたままじゃ…風邪、引いちゃうから…ね??」
すると、山崎の言葉に観念したのか…というか、髪を濡らされたら風呂に入るしか手段はない。
土方は、胸ぐらから手を離し、ポイ。と、山崎を捨てた。
「イデッッ…。」
土方は無言で風呂の準備をすると、ものすごい勢いで戸を閉め、行ってしまった。

(さ、作戦成功か…??)
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