小説−短・中編部屋
□約束でいいなら
1ページ/3ページ
俺はどうしたいのだろうか?
その答えは何処に……?
−約束でいいなら−
後少しの猶予しかない。師を倒してローレライを開放するまで。
そして……
俺が消えるまで
だからその貴重な時間を愛しき者と。
「アッシュ。どうしたんだよ今日。」
休んでいた町で突然呼び出しを喰らい多少不機嫌そうにルークが言う。
「遅かったな。レプリカ。」
「んな、突然呼び出されたんだからしかたねぇだろっ。」
向きになる相手をアッシュは鼻で笑った。
「ただ会いたくなっただけだ。」
「はあっ?!」
声を荒げるルークの肩を抱き、耳元へと口を近付ける。
「お前にな……………ルーク。」
耳元での大好きな相手からの囁き。
滅多に言われる事もないからこそ恥ずかしさと喜びは増す。
「は、はずっ。てかごまかすなっ!!」
照れ隠しにそう言ってじたばた暴れた−勿論、相手の力の方が強くて手から逃れる事は叶わなかったが。
「俺も……会いたかった……けどさ。」
ぽそり、呟いた。同時にぎゅっと抱きしめられる。
「アッシュ……?」
「なんでもねぇ……」
何だかアッシュがいつもよりも脆そうで、一瞬で壊れてしまいそうな位儚くて……。
だからルークはその背を撫でた。
撫でる事で不安定になっている被験者を宥めようとした。
いや、不安定な相手を見て不安定になってる自分を支える為に、なのかもしれない。
‡†‡
「アッシュ。」
すっとそうしていた時、ルークが呼んだ。
「一緒に、ずっと一緒にいれたらいいのにな。」
言った途端頬を伝う涙。
わかってる。そんな事有り得ないって。
被験者を複製が好きになったら、完全同位体同士が好き合ったら、必ず訪れる終末がある。
大爆発
俺はアッシュに取り込まれてしまう。
そうなったらもう、こんな風に抱き合ったり、笑いあったり、話したり……。些細な事すら出来なくなってしまう。
だからこのまま時間が止まって、凍り付いてしまえばいい。
……そう思っても無理はない……よな……?
「…無理、だろう。」
「そうだよな、無理、だよ……な……。」
歯切れ悪く言い切られる。
無理だとはわかっていた。それでもそう言われるとやはりショックだった。
「………今は、な。」
「へ…?」
「今このまま一緒に俺とてめぇがいたら世界を救うとかいう綺麗事以前の問題だろうが。」
「うん」
突然言われ、先程まで止まらなくて困ってた涙もぴたりと止まった。
「だが……終わったら一緒にいてやる。」
「え…?」
「全てが終わったらずっと一緒にいてやる。」
「ほん……とう……?」
「ああ。」
−−守れない約束だろうがな。
思ったそれは言わない事にする。
「じゃあ…さ、約束、しようぜ。」
「約束?」
「終わったら一緒だ。って。」
きっと守れない約束。
破るしかない約束だがそれでルークが泣き止むならいいか。と思ってしまう。
「わかった。約束だ。」
互いの手を取り合い見つめ合い、約束をかわす。
子供では無いから指切りだなんていう幼稚な事はしない。ただ見つめ合った。
温もりを惜しみながら離れてまた動き出す。
約束を原動力にして。
「…約束、だからな…」