黒子のバスケ

□赤黒
1ページ/1ページ



かけがえのない仲間を手に入れた高校生活は終わり僕は大学へ進学した

それに伴って一人暮らしというものを始めることになった

正直生活能力はあまり無い上に慣れない環境に1ヶ月近くはバタバタと慌ただしい毎日を送っていた

家事をしに来てくれた母も1ヶ月も経つとそう毎日家に来るようなこともなくなった

久しぶりに母の姿を見ない日、久しぶりの休みということで昼から眠りについていた

どうやらソファで眠っていたようで関節が痛むのを感じながら目を開いた


「やぁ、おはよう」


そう言って微笑んだ彼は向かいのソファに座ってコーヒーを飲んでいた

驚いて目を見開くのは仕方ない


「な、鍵「テツヤの母親が合鍵をくれたよ」


文庫本を片手に淡々と答える彼に溜息を漏らしつつ体を起こす

バサッと音を立てて床に落ちたのはブランケットだった


「赤司くんがかけてくれたんですか?」

「そうだよ。僕が来た時にお前の体は冷え切っていたからね」


その言葉に、そういえばエアコンをつけたまま寝たのだと思いだした


「それは、お手数おかけしました」

「いいえ」

「それで、何分ほど待っていたんですか」

「そうだね...」


思い出すように指を折りながら"2、いや3時間くらいかな"と呟いた


「さ!......薄々は気づいていましたが赤司くんはバカなんですか」

「そんなにはっきり本人を前にして言うのか」


クスクスとそれはもう楽しそうに彼は笑った

本を読んでいたからな、と近くに積み上がっていた文庫本を手に乗せながら答える


「そに、お前の可愛らしい寝顔が見れたしな」

「......で、何の用ですか」


溜息交じりにそう言うと、彼はきれいに微笑んで文庫本もコーヒーも手放して僕を抱きしめた

急激に彼の香りと体温が近くなって心臓がばくばくと早鐘を打った


「そろそろ寂しがるんじゃないかと思って」


耳元でそう囁かれてまた心臓が鳴る

そういえば彼も大学に進学して互いに慌ただしかったから、こうして触れ合うのも久しぶりだ


「別に寂しくは......」

「じゃあ言い方を変えよう。俺は寂しかったよ、テツヤ」


軽いキスをして微笑んでくる彼には敵わないなとまた溜息を吐きながら抱きしめ返した

すると、彼は微笑んで僕の前髪を掻き分け額にキスを一つ落とした

彼の温もりに包まれて、久しぶりに彼の我儘に付き合ってやるのも悪くはないかなと思った



言わなくたって
(君には分かってしまうんですね)


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ