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□例えばそれは冬の日
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『僕はもう一度、青峰くんが笑ってバスケをする姿をみたい』

黒子の声がフィードバックする


似ていた、と思う

アメリカから日本に帰ってきて、相手がいないとふて腐れてた昔の俺に

自分だけを信じてプレーをする青峰が

そしてまた、似ている、らしい

黒子とあってチームプレーを知った俺と

才能が開花してチームから突き放される前の青峰が

元帝光のマネが言っていた


紙一重の存在だと思う

俺と青峰

光と光

緑間も言っていた

俺と青峰は同種だと

そしてひとつわかること

断然俺の光より

あいつの光が強いということ



そして時たま不安になる

──…最終的に影は、どちらの光を選ぶのか

今までは余裕があった

黒子は俺だけを見ていた

正確には違うのかもしれないけれど

周りを拒絶する青峰を選ぶことは、少なくともなかった

だけれども──


『…青峰くん』

俺の顔のすぐ下

青峰と向かい合わせて、俺に担がれた黒子

名前を呼ぶ彼の視線に、変化が

──…黒子?

この試合、確かに青峰は笑ってバスケをしていた

それはすなわち昔の青峰に戻ったのではないか

俺は、俺のままでいるけれど

同じ光が、ふたつ…


だけれども


『お前の勝ちだ、テツ』

青峰はまだ、独りだった

黒子を拒絶した

《敵として》認める形で

──…もう、お前の光には戻れない、と


鈍いと言われる俺にわかるくらいだから黒子にわからないはずがなくて

そっと、彼を覗き込む

心臓が、止まる気がした


──…傷付いた、顔をしている

それは一瞬だった

青峰でさえ気づいてない筈だ

知っているのは俺だけ


それから黒子と青峰はいつか空振った拳を合わせた

それはまるで離れた二人を再び繋ぐ儀式のようで

──…青峰が拒絶しなければ、お前はあいつの光になっていたのかもしれない


俺の影であるはずの彼が、

酷く遠く感じた
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