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□選択肢は@=A
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「君は本当は誰にも目視されず人知れず消えていく存在だった」
『選択肢は@ = A』
「はい?」
今日も今日とて部活が終わり、鍵当番だった黒子が鍵を閉めようと確認をしていた時のことだった
唯一、しかし何をするでもなく部室に残っていた赤司の突拍子な発言に黒子は素頓狂な返事を返す他なかった
「才能を見出だされず、大好きだったバスケを嫌いになれないまま、上手くなれない自分への自己嫌悪だけを胸中に秘めながら、バスケを辞めるはずだった」
全てを見透かしたような物言いが気に入らない。と黒子は内心赤司を気味悪がっている
──…今日は何が始まるのか
訝しげな目で赤司を見ると、あちらもやはり絶対不干渉な笑みを張り付かせていて一切その心は読めない
硬直状態に入ったそれは自分が折れなければ永遠に─文字通り永遠に。赤司はそういう男だ─解けることはないだろう
「…何がしたいんですか」
溜め息をわざとらしくついてから言う
唯一出来る威嚇はこのくらいしか思い付かないし、このくらいで赤司が退くとさえ思っていない
まぁ俗にいう無駄なあがきというやつだ
しかし赤司は何をいうでもなく、だがそれは確実に黒子の疑問符を待っていた
つまり先ほどの問いかけは類に合わなかったのだろう
少し間をおいてから黒子は自分なりに答えを出して口を開いた
「つまり何が言いたいんですか」
どうやら正解だったようで赤司の微笑みは少しだけ嬉しそうな香を匂わせた
しかし答えを口にしようとはしない
何がしたいのかわからない。
つくづく……
──…つくづく、気味の悪い男だ
「何が言いたいんですか、ぼくに」
そう黒子が言ったところで漸く赤司は口を開いた
何を言うのか、無意識に黒子の意識を奪ったそれは素っ気なく、いつもと同じ調子で言葉を紡いだ
「つまり君はそう言う人間だったと言うことだ」
……やはり、赤司という男はわからない。
雲を掴むような結論に黒子の脳はもはや理解するという選択肢を失っていた