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□好きすぎて好きすぎてでも愛したくなくて【日月】(伊月視点)
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7月もそろそろ終わろうとしてる

河原の土手を歩いているとみるみるうちに空は茜色に染められていって

夕焼けが頬を照らして俺の表情が影に埋もれる

「俺はね、怖いんだ」

顔に影を持った人ほど恐ろしく見えるものはないらしい
日向から見て今の俺は戦かれる対象なのかな

「日向が好きすぎて好きすぎて堪らない」

影を殺すように日向から一歩、下がる

「今はまだ好きだって思ってる、だけどこれが愛してるに変わるとさ、」

君と誰かが話しているだけで嫉妬してしまう

君が俺じゃない誰かからのメールを見て微笑んでるだけでイラつく

君が俺のことを考えててくれないと、寂しくて…──

「君を、束縛することになる」

俺のことだけ考えててほしいから……

もう気づいてるんだ

そんな感情が俺の心を、そう夕焼けが空を染めるのと同じ速さで、占領していくのを。

怖いんだ

君から拒絶されることが



「だから…ッんっ…」

言葉を紡ぐ前に強く腕を引かれて唇を奪われた

その早さに目を見開くと、いつにも増して険しい顔の日向がいた

眉根を潜めて、なにか悲しみを噛み締めるような顔

─…どうしてそんな顔するの?

「ひゅ…が…」

「俺はお前が好きだ」

ぷはっと息を吐いて、そうしてたら日向が真っ直ぐな声で言った

「好きすぎて好きすぎて好きすぎて」

もう一度引き寄せられて、抱き締められる

「好きなんて言葉じゃ表せねぇ…俺はお前を」

──…愛してる

耳元で静かに囁かれる

俺よりも少し低いキーの声は脳に吸い込まれていって


「俺も怖いよ、お前がもし今、俺を拒絶しようものなら死ねるくらいに」

「…ひゅー、が」

首の拘束を解かれて至近距離で見つめあう形になる

「伊月」

名前を呼ばれて胸が鳴る
鼓動が鼓膜を圧迫していくみたいにだんだん音が大きくなっていって、多分顔も真っ赤だと思う

「お前は今、俺が怖いか…?」

メガネ越しに見える日向の瞳は綺麗で、引き寄せられそう

「こわ、くなん…かない、よ」

途切れ途切れに言う

「だから…」

愛することは怖いけれど

「俺を…愛して?ひゅーが」

──…君に愛されるなら、悪くない

そうして俺は、はじめて自分から日向にキスをした




──…俺を愛して…?

それと同じ分だけ俺は

君を愛すから
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