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□君についてゆく
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『君についてゆく』




とん、と背中が相棒にぶつかる

──…偏屈で、ツンデレで、天才な俺の相棒、緑間真太郎

背中越しにひしひし伝わってくる殺気は、味方である俺さえ戦かせるほど凄まじい

その綺麗に整えられた指先に握る、精錬された美しい漆黒の拳銃

そんじょそこらにゃない、全身を纏うように幾何学模様の施されているそれは月にたまに反射して、目映いほどの光を醸し出した

「…外すなよ、真ちゃん」

目の前を覆う、俺たちを取り囲む敵らに牽制しながら言う

そこにいつものような気軽さはあっても決して真剣味のない話じゃない

刃を上に反らせ、峰で首を削ぐような独特の構えは俺だけのもの

この俺だけの広い視野を最大限に生かした、俺がつくった流派、そして刀

鈍色に光る刃は恐ろしいほど軽く、しかし同等の固さと同等以上の切れ味を持っている

風斬る剣、と銘打たれたのは記憶に新しい

真ちゃんの銃と同じく月に光るそれ越しに見る敵は、人二人に送られる刺客にしては大々的すぎる
だからといって殺らなきゃ殺られるだけだし、殺れる自信さえある

だって、こいつと一緒なら。

真ちゃんと一緒なら、なんだってできるんだから。

「ふん、あり得ん馬鹿め。」

眼鏡を押し上げ、嘲笑する真ちゃんが音と動きから推測される

「俺は人事を尽くしている。」

何度も聞いたことば

その、血の滲むような努力を、俺は知ってるから

『君についてく』

耳をつんざく音

敵のド頭をピンポイントで撃ち抜いたそれは煙を少し燻らせて彼の姿を霞ませる

それは牽制終わりの、合図

「だから、俺の弾は、外れない」

当たり前じゃん、そう呟いて俺は敵の真っ只中に走り出した



斬る

斬る

斬る

なにも考えず

ただ、相棒だけを信じて

上がる血飛沫に目もくれず、ただ敵を抹殺することだけを目的に

近距離武器を持つ俺相手には不利だと悟ったのか、敵は真ちゃんに狙いを定めることにしたようだ

──そんなの、許さないぜ…?

銃を二本に増やし、両手をfullに使って応戦する緑間

だがやはり苦戦状態に変わりはない

敵の一人が後ろに回り込み、その手に持つナイフを大きく振りかぶる

「っつぇあ!!!!!!!!!」

気合い一声、ナイフを振り上げたその腕もろともぶった斬る

断末魔なんか聞いてる余裕はない
緑間を囲んでいた敵らを次から次へ薙いでいく

どぉん、とぶっとい音が鼓膜を揺らして、真後ろの敵が倒れる

こめかみを撃ち抜かれた跡があった

「さんきゅ、真ちゃん」

「ばかめ、本気を出さないから危ない目に遭っているのだよ」

最初に危ない目に遭ったのは真ちゃんだろ、と心の中だけで呟きつつも手は止めない

「ちゃっちゃと片付けて帰るぞ、高尾」

「了解っ!」

鷲の目を持つ俺に死角はない

円を描くように旋風を巻き起こす

こびりついた血を払い、覗いた鉛色のそれに誰かさんを重ねて微笑む

真ちゃんを傷つけること

いや、真ちゃんに触れることさえ許さねぇよ

「でぇっやぁああ!!!!!!!!!」


だって俺は。

緑間にだけ

ついてゆくって、

決めたから
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