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□例えばそれは冬の日
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息づかいが聞こえる
いつもの試合より数倍動悸の早いそれ
強ばっている
怖がっている
古傷に、怯えている
…それでも俺は、
『…まさか、火神でなく青峰の方を信じたっちゅうんか!?』
『いいえ少し違います』
──…信じてる
『僕が信じたのは両方です、でも…』
──…ただ直向きに
『最後に決めてくれると信じてるのは一人だけだ!』
──…お前を信じてる
『火神くん!!』
ほら、パスが来る
見る人全てを唸らせる
揺るぎなく曲がりなく、さらには加速する
お前の心を表したようなパスが
俺の腕で引き留める
お前が道を見失わぬよう
黒子のバスケに道を作ろう
真摯なだけのお前が
俺の元から、離れていかないよう
──…信じてる、信じてる、
永遠にお前を。
例えそれが、いつ何時も
──…お前の骨を軋ませると知っていても
『例えばそれは冬の日』
夜の風が頬を撫でた
心なしかそれはいつもより優しくて、まるで俺らの勝利を祝っているようだ
ポールの手すりに両腕を組み置く
ふと右横に目線だけやった
隣に黒子は、いない
何を思ってか一人俺はため息を吐いた
黒子は青峰を探しにいった
頼みたいことがあると言っていた
ただそれだけだ
それだけなのに、もやもやする
そんな自分に嫌気がさして、もうひとつだけ同じ動作を繰り返してから目を閉じた