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□好きすぎて好きすぎて【日月】(日向視点)
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ただバスケが好きだった
ボールの跳ねる音
リングをかする達成感
プレイ中の空気
そしてお前に出会った
欲しいところに来るボール
その名の通り全体を視野にいれた明確な指示
勝利のハイタッチ
もっとバスケを好きにさせてくれて
いつの間にか
お前を好きになっていた
『好きすぎて好きすぎて』
無理だ
絶対、できるはずがない
ガコン、と大きな音を立ててボールがリングに跳ね返る
今日で何回目かわからない一連の動作にまたか、とため息をつくことすらしない
それほど今の俺は気が滅入っていた
跳ね返って落ちたボールを拾いに行く途中、ふと伊月と視線があった
『だ』『い』『じょ』『ぶ』『か?』
口パクだけの気遣いに伊月らしさを感じながらも、やはり俺はため息をつかずにいられなかった
嗚呼俺がまさか
──…こいつのことを好き、なんて
バスケを始めたきっかけはバスケが好きだったから
バスケを続けているのは目標があるから
目標を見出ださせてくれたのは仲間だった
中学で一番相談に乗ってくれたのも彼だったし
高校でバスケやめるって言ったとき一番抵抗したのも彼だった
そう振り返ってみれば俺のバスケ人生、必ずと言っていいほど彼─伊月俊─が登場するのだ
最初は空気をよく読むいい友達だ、なんて普通の認識だったのに
同じ時間を過ごすにつれて、好感は好意に変わっていった
そして気づいた
──…俺は、伊月俊が好きなのだ、と
思い立ったが吉日
…というより一人意識過剰では周囲からの目線が痛くなるばかりだから、俺は今日の帰り道告白しようと思っていたのだが…──
「ッ!!主将!!!!」
「へ!?Σってうぉあッッ!!!!!!」
ドン、と鈍い音
「いっつつつ……」
今は練習試合中
水戸部からパスをもらった木吉にマークつこうとした瞬間、目の前に黒子がいて衝突した
「主将、何やってんだ…です」
黒子を引っ張り上げる火神の片言敬語を尻目に悪ィと黒子に対してだけ謝りを述べる
…とまぁ、こんな感じで練習に全然身が入らない
そのあとも黒子の影の薄さと俺の集中力の無さが共鳴反応を起こして複数の不幸が生産された