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□好きすぎて【日月】(伊月視点)
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バスケが好きだった

スポーツとしてのバスケも好きだったけれど。

君と同じ場所に立てる唯一の場所

君が俺に信頼を置いてくれるのがわかるときだったから

俺は多分…いや、絶対

クラッチタイムに入った君がシュートを落とさない確率と同じくらい

俺は君が好きだったんだ

──…日向



『好きすぎて』


「──…え?」

いつも通りの練習が終わって、いつも通り片付けと掃除を終わして、いつも通り日向に「帰ろ」なんて声をかけて。

その帰り道に事は起きた

この日の日向はどこかおかしくて、珍しくスリーが一つも─そう、本当に一本も─入らなかった

それだけじゃなくて、試合中なんか黒子の存在にマジで気づかなくてタックルしてったりパスされたボールを素通りしたり

だからといって『調子悪いのか』聞いても『は?』の一点張りだった

帰り道もぼーっとしてるようで畦道から落ちそうになったのは余程のことで驚いた

ほんとに大丈夫なのか、って聞いたのに日向はその途端神妙な顔つきになって

何事か呟いた

そして冒頭の、俺の素頓狂な返事に戻る。

「だぁらー…」

ボサボサ頭をかきむしって面倒くさそうに…いや、こんな仕草のときって実は照れているだけだったりするんだけど。

「俺は、お前が…好きだ」

言ったと同時に日向は顔を真っ赤にして俯いてしまった

…日向が、俺を。

──…好き?

歪む視界に日向の顔が辺鄙に映った

それが俺の涙だということには数瞬を置いてから気づくのだけれども。

それを確認する前に俺は日向の胸に飛び込んでいっていた

もちろん日向も男。
同じ体格の俺が予告なく飛び込んでいったからって後ろに倒れたりしないで、でも俺をしっかり受け止めてくれた

「……遅すぎるよ、バカ」

もしかしたら鼻声かもしれなかったけれど、そんなのもうどうでもよかった

男の癖にびーびー泣く俺を、日向はだぁほって一言だけ呟いてきつく抱き締めてくれた



日向のばかばかばか。

俺は中学の頃から好きだったのに。

もっと早く気づけばか。


抱き締められながらつい愚痴ると、日向は悪かったよ、なんて苦笑して言って。

嗚呼もうそれだけで許しそうになっちゃうじゃないか。

その分今日からたっぷり愛してやるから、だって。

許すしか、ないじゃん。

ひゅーがのばーか
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