私は奈落の造りもの
□18.冥道残月破
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弟の声を聞き、現れたと知ると、殺生丸の眉間には深い皺が刻まれる。
一方、蓮香は犬夜叉の姿をとらえると苦しげに表情を歪めた。
犬夜叉一行とは逃げるようにして離れて以来。あまり良い別れ方ではなかっただけに本音を言えば会いたくはなかった。
「あ、あれは!…死神鬼」
犬夜叉が連れていたのはいつもの仲間に加えて一匹。
冥加を連れていた。
冥加は冷や汗を流し殺生丸の様子を伺いながら、死神鬼の事を犬夜叉に説明する。
冥加は殺生丸が死神鬼から聞き出そうとしている秘密を知る者であり、さらにその先ー…
殺生丸の父の遺志をも知る者。
頭がキレる殺生丸が秘密に辿り着いてしまえば、すぐにその先がばれてしまう。
それだけばかりは避けなければならなかった。
どきどきと動機のする胸を四本足で押さえつつ策を練っていると、死神鬼が犬夜叉の持つ刀が鉄砕牙かどうか確かめるために冥道を放ってきた。
犬夜叉はそうとも知らず、鉄砕牙を抜く。
「あれは、鉄砕牙か。奴には2人の息子が居ると聞いたが…弟の方に鉄砕牙を与えたか…」
「……」
「どういうことだ、殺生丸。本来なら兄の貴様が譲り受けるのが筋ではないのか?」
小さく勝ち誇ったような笑みを浮かべながら殺生丸の一番気にしている核心に触れた。
だんだんと苛立ちが募り、冷静さがかけ始めていた殺生丸は戦う為に呼び出したなら戦えと怒鳴った後、冥道を放つ。
だがその冥道もあっさりと死神鬼の冥道に吸収されてしまった。
「殺生丸、冷静さをかかないで。死神鬼の思うつぼよ」
思わず上から背中へ呼びかける。
完全に完成されていない殺生丸の冥道残月破は死神鬼には殆ど効かない。
本人もその事を分かっているはずなのに、冥道残月破で戦うのは殺生丸の自尊心故なのだろう。
「殺生丸貴様、知っているか?天生牙がどうやって生まれたか」
「なに…?」
「言っただろう、貴様のおやじと戦った時、天生牙はそんな形ではなかったと…いや、天生牙は存在すらしなかった。
…わしが実際に戦ったのは鉄砕牙だ」