私は奈落の造りもの
□18.冥道残月破
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しばらく童子について歩くと、目の前から姿を消した。
気配が無く、突然現れたり消えたりする辺りから見て、誰かの式神なのであろうと思っていたが、式神らしき童子に案内されたのは何の変哲も無い岩場。
ここに天生牙の秘密を知る者が本当に居るのか。
疑うと上に妖気を感じた。
その直後妖気の塊が飛んでくる気配にその場を飛び退き、蓮香やりんを案じて振り返れば姉の羽で空に逃げた蓮香と阿吽に乗るりん、琥珀の姿を確認する事が出来た。
そして、すぐさま牙を抜き、冥道残月破を放つ。
「わざと足元を狙ったか、敵がここに居ると知りながら」
見上げれば殺生丸の遥か上にそびえ立つ岩の上に佇む妖怪とその後ろには導いて来た童子の姿。
殺生丸の腰に携える牙を見た妖怪は殺生丸の父と戦った昔を語った。
刀の形が現在と違うという点が気になるも、目の前に居る妖怪が敵であることには変わりない。
冥道残月破を放った後、鞘に収めた天生牙を再び抜く事無く爪で向かっていく。
「秘密を知るために刀を使わず倒そうという気か。なめられたものだなこの死神鬼も!」
再びの攻撃をかわし、飛んできた何かを目で追いかけるとそれは自身の刀が持つ技、完全な円である冥道残月破だった。
「冥道残月破!?何で…殺生丸の技のはず!」
「殺生丸の技?ふん…笑わせる。冥道残月破は元々この死神鬼の技だったのだ。それを貴様の父が奪った!!!!!!!
…そしてこの顔もな」
顔半分を覆っていたと思っていた面を外せばそこに顔は無い。
だが、殺生丸はその事実に臆することも無く、無表情を保っている。
「黙って聞いていれば…技を奪われた、顔を壊されたと泣き言を言うためにこの殺生丸を呼び出したのか」
「冥道残月破はこの死神鬼の技…同じ技の使い手は二人もいらぬ。天生牙ごとき、不完全な刀もな」
“不完全な刀”と聞いて今度は明らかに動揺した。
その様子に死神鬼は笑みを浮かべ、更に冥道残月破を放つ。
冥道は死神鬼を睨む殺生丸を確かに捉え、真正面から向かっていく。
蓮香が上から短い叫び声を上げるが、殺生丸が避けきると安堵した。
「貴様、何を知っている」
自らの父から形見として受け継いだ筈の牙に何があるというのか。
己が知らない秘密を目の前の敵が知っていることへの腹立ちが隠せなかった。
だが、死神鬼の口ぶりからしてまともに教える気も無いらしい。
「ならば、もう用はない!」
殺生丸が大きな死神鬼より大きな冥道を放ち、死神鬼を葬り去ろうとするがきれいに避けられてしまう。
死神鬼が殺生丸の放った不完全な円の冥道に完全な円である冥道を放ち、自らの冥道へ吸収させていく。
「殺生丸の冥道がッ!」
殺生丸の上から見ていた蓮香が驚愕の表情で思わず下を覗きこんだ。
殺生丸も目を見開く。
気づけば2つあった冥道は1つの小さな円しか残っていない。
その光景を殺生丸の連れと同じく驚きの表情で見ていた一行が別に居た。
「殺生丸!」