私は奈落の造りもの

□11.最期の風
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「赤い…花びら?」

「……」




いつの間にか風に運ばれてきた花びらが蓮香の目の前でヒラヒラと踊る。

蓮香の瞳が花びらを追うように右から左へ動いた。

手を伸ばそうとするも、殺生丸の腕の中から落ちかけて止める。




「…ここ?」




殺生丸が降下していくのを察した蓮香が周りを見回すと、赤色に染まった花々の中心に姉がいた。




「神楽姉様!どうして…なんでこんな事に…」

「来てくれたのか…?」

「殺生丸が連れてきてくれたんだよ」




神楽の体に空いた3つの穴から瘴気と血が溢れ出て、神楽の着物を一層赤く染め上げていく。

蓮香の瞳からはとめどなく涙が流れ、頬に幾つもの線ができた。




「姉様、これは誰にやられたのですか!?」

「奈…落だよ」

「…殺生丸、神楽姉様を救って!私の時みたいに!」




涙目で叫ぶと殺生丸は躊躇いもなく、天生牙に手をかけた。

真に神楽を救おうとしているのだ。




「……」

「……」

「…殺生丸?」

「蓮香、もういい」

「姉様!」




叫ぶように神楽の声を遮って神楽の手を強く握る。

大粒の涙が神楽の手を濡らし、神楽の表情を柔らかいものに変えていく。




「これで自由になれる…」

「逝くのか」

「神楽姉様!!」




こんなに想ってくれる妹が居るなんてな…


短い間だったが


楽しかった…


もう、悔いはない…


 
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