私は奈落の造りもの
□10.大切な想いと思い
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少しの間だけ薬草を探しに行こうかな…
りんと邪見を交互に見ながら頭を悩ませた結果、少しだけこの場を離れることにした。
なるべく早く帰って来るために、神楽の羽に乗って行こうとするが、いつもしまっているところに羽がない。
え…
蓮香は懐を探りながら記憶を辿ると、1つの場面に心当たりがあった。
白霊山で一度羽から落ちたことがある。
多分、その時だ。
神楽姉様から初めて貰った物なのに…
思い出すのは奈落の肉塊から生まれたばかりの自分に様々な事を教えてくれた神楽の姿。
そして、面倒くさそうにしながらも自分に様々なことを一から教えてくれた姉の姿だった。
「取りあえずこれを着ろ」
神楽は片手に持っていた着物を投げ、一糸纏わぬ蓮香に頭から着物を被せた。
無言で蓮香が着物を見つめていると、痺れを切らした神楽が袖に手を通すように言う。
ゆっくり袖に腕を通した蓮香は神楽を見上げ、視線だけでこの先どうすればいいのか尋ねる。
「世話の妬ける妹だね。帯を締めるんだよ」
「……」
神楽が帯を締めている間、蓮香はされるがままになっていた。
その間も終始無言で蓮香はぼーっと神楽の行動を見守るだけ。
「ジロジロ見る前に、自分で練習しなっ」
そう言うと神楽は結び終えた帯の端を引っ張って解いてしまった。
この行動もまたぼーっと見つめる蓮香は何をするでもなく固まっている。
そして、初めてか細い声で何かを喋った。
「だれ…」
「は?」
「……」
「神楽だよ」