短編

□小さな不安
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「っーいたたたたぁ〜」

蓮香が目を覚ますと、保健室の天井が目に入る。

そういやぁ私、サッカーボールが顔面に当たって、、、。

「何で私ってこうも運が無いんだろ」

「どうしたと言うのだ」

「うん、それがね、、、ってぇぇぇぇー!」

蓮香がいきなりの殺生丸の登場に驚いき、声を上げると、殺生丸は不機嫌そうに眉間に皺を寄せる。

「煩い」

彼の一言でしゅんとなってしまう蓮香。

そんな蓮香を見ると、怒ろうとは思えなくなる。
むしろ、優しくしたくなる。

「分かれば良い。
それにしても、お前の運動音痴にもほどがあるぞ。おまけに、気ぜ、、、」

「気絶とは何だ」と言おうと思っていたがそれは叶わなかった。

「殺生丸のことで悩み事してて、その時に当たったのよ馬鹿っ!」

あの冷酷非情な殺生丸に馬鹿と言えるのは恐らく世界でたった一人蓮香だけだろう。

他の者は絶対に口にしない。
口にしたら最後、下手をすれば死んでいるかも知れない。

だが当の殺生丸は、怒った感じも無く、どこか拍子抜けしたような表情をしていた。

「私のことだと?」

「そっ、、、そうだけど何?」

「何を考えていた」

「言わなくちゃ駄目?それって、もしかして強制的に?」

訊いてみたが、殺生丸は何も言わない。

肯定の意味なのだろう。
直感でそう感じた。

「はぁ、いいわよ。言うわよ。

私達付き合ってるのに、学校でそれらしいこと出来てないじゃない。
だから、それらしいこと、、、つまり手繋いだり、話したりしたいなって。

それなのに、殺生丸ってば女の子達にちやほやされてさ」

蓮香は、半ばふてくされたような言いぐさで言うと殺生丸を見やる。

「すまない。

お前を守るためだった。それに女たちは、勝手に寄ってくるだけだ。

お前が心配するほどのことでもない」

蓮香を安心させるように言うと、殺生丸は蓮香を腕の中に閉じ込めた。

蓮香は、久しぶりに感じる殺生丸の匂いと殺生丸の温かさに酔いしれた。

「私、どうなってもいいから、学校でも殺生丸と居させて?」

殺生丸は自分が蓮香に弱い、叶わないと感じた。

蓮香に甘い声で囁かれるとどうしてもことわれない。

それに、殺生丸も学校で彼女と一緒にいれないのは嫌だった。

「蓮香、お前には絶対に辛い思いはさせぬ。約束だ」

「殺生丸大好きっ!」



ー完ー
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