短編

□半妖
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視界が暗い。
だが、そこには、一筋の光も見える。

蓮香は、鉛のように重い瞼(まぶた)をやっとの思いで開けた。

朝のさんさんと照る太陽が見え、そこに人の顔の影がある。

その影を作っているのは、女の子だった。

蓮香が女の子を見つめると、女の子は満面の笑みで蓮香に話しかけた。

「お姉さん、大丈夫?」

蓮香は、体を起こそうと思ったが、体中が痛い。

「うぅ、、、」

蓮香痛みに顔を歪めると、女の子は、「まだ、動かないで」と、言う。

よく見ると、蓮香の体は、傷だらけだった。

私、、、逃げるのに必死だったんだ、、、。

昨日の夜、鬼に追われて逃げている時、木の枝や、葉が体に打ちつけられて出来た傷だった。

それにしても、、、

「ここ、何処?何故、ここに?」

一番の疑問だった。

「それはね、、、」

女の子が話し始めようとした時、何か緑色の小さな妖怪が、偉そうに話しだした。

「小娘!起きたかっー!殺生丸様に感謝しろっ!殺生丸様が、お前を救ってくださったのだぞ」

ー殺生丸?どこかで、、、。

背は、小さいのにやたらとデカい態度の妖怪の話しを聞き流しながら、蓮香は、考えていた。

すると、女の子が寄って来た。

「殺生丸様、今は、居ないけど、そのうち帰って来るから。殺生丸様、優しくて、強いんだー」

とても嬉しそうに殺生丸のことを話す女の子。
きっと愛想が良くて、かっこいいひとなんだろうと女の子の話から予想する。

「ところで、お姉さんの名前は?」

「私?私は、蓮香よ」

「へー蓮香ちゃんって言うんだー」

今まで、名前を知らなかったのが不思議な感じがした。

「私は、りんだよ。あれが、邪見様」

りんは、そう言いながら、邪見を指差した。

すると邪見は、ぷりぷり怒って騒ぎだした。

なんとも忙しい奴だ。

「これー!りん!人を指差すでなーふぎゃ!」

なぜか、言い終わらないうちに邪見が、潰れた。

「あーっ!殺生丸様ー!」

りんは、邪見を踏み潰している妖のもとへかけて行った。

あれが、、、りんの言ってた、殺生丸様なのね。

あのときー
鬼に追われて逃げていた時、視界の端に映ったのは彼だった。
そう。私は、彼に助けられた。

「りん、目を覚ましたのだな」

殺生丸は、蓮香の方へ視線を向けて、りんに言った。

「うん。蓮香ちゃんね、今さっき起きたばかりだけど、、、」

りんが、そう言ったのを聞くと、殺生丸は蓮香の近くにやって来た。

「貴様、半妖か?」

まぁ、助けられた時と明らかに髪の色が違うから、そう聞かれるのも、当たり前か、、、。

「はい」

「蓮香ちゃん、半妖なんだー。犬夜叉様と同じだね」

「これー!りん!犬夜叉の名を出すでない!」

邪見が何か言っているが皆、気にしていない。

そうか、、、犬夜叉のこと知ってるんだ。

でも、かごめちゃん達みたいに、私のことは、知らないんだ、、、。

するとりんが、思いついたように言った。

「蓮香ちゃん!お腹空いてない?りん、お魚採って来るから待っててね。ほら!邪見様行くよ!」

半ば強引に連れていかれる邪見。
かわいそうにひこずられている。

二人きりになった殺生丸と蓮香の間に、気まずい沈黙が流れる。

すると、殺生丸が沈黙を破った。

「何故ーお前から犬夜叉の匂いがする?」

殺生丸は、蓮香からする、犬夜叉の匂いが気になっていた。

「あぁ、匂いね、、、昨日一緒に居たからね。貴方、犬夜叉のことを知ってるの?」

「知らん」

帰って来たのは、短い返事だった。

じゃあ、何で犬夜叉の名前、知ってるの?

そう思いながら話していた蓮香。

するとりんが、邪見を連れて戻って来た。

その両手には、川で採った魚を持っている。

「邪見様、火起こして」

りんは、邪見火を起こしてもらった後、魚を焼き始めた。

今さっきまで話していた殺生丸は、木の根に腰を下ろし、静かに目を閉じている。

しばらくすると、焼き魚の香ばしい匂いがしてきた。

すると、りんが蓮香のもとに魚を持ってやってくる。

「蓮香ちゃん、はい、魚」

「ありがとう」

蓮香は、りんに笑顔で、お礼を言って魚を受け取って食べた。

少し離れたところには、蓮香達が話しながら魚を食べている様子を見守る、優しい目があった。

 
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