私は奈落の造りもの

□10.大切な想いと思い
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太陽も高く、汗が噴き出るような気温の中、一行は白霊山から注ぐ小さな河の辺を歩いていた。

だが、りんも蓮香も邪見も足取りが危なっかしい。

ついには邪見が阿吽の手綱をもったままパタリと倒れた。




「邪見様!?」

「邪見?どうしたの?」

「邪見様!邪見様!」

「殺生丸、邪見が…」




蓮香は殺生丸に訴えかけるように上目使いで見ると、殺生丸が邪見に歩み寄った。

暫く伸びている邪見を眺めた殺生丸は一言。




「暑さにやられただけだ」

「じゃぁ、死んじゃうとかないよね?」

「ない…手間を掛けさせるな邪見」




邪見を見下ろして、強い口調で言葉発する殺生丸を蓮香がくいっと引っ張り、一旦邪見から離す。

そして不機嫌な殺生丸と対峙し、言い聞かせるように言った。




「りんちゃんも疲れてるから、ここで休まない?」

「ふんっ」

「殺生丸…」

「好きにしろ」




蓮香は邪見を抱えて日陰に移動すると、仰いでやった。

りんは川から水を汲んでその水を邪見に飲ませる。




「邪見、大丈夫?」

「何を言うかぁ〜わしゃぁ、しっかりしておる〜!」

「邪見…」




蓮香は邪見を簡単に仰ぎながら心配そうな視線を投げる。

りんも同様。

殺生丸はと言うと、離れた所から三人を見ていたものの、飽きてしまったのか何処かへ行ってしまった。




「殺生丸ってば…邪見を心配してないのかな」

「きっと心の中では心配してるんだよ!」

「そうなのかな…」










空が朱く染まってきた頃、邪見が呻き、苦しむ声が聞こえてくる。

りんは邪見のもとにすぐに駆けつけ、声をかけるが返ってくるのは呻き声だけ。

見かねた蓮香が薬草でも採りに行こうかと立ち上がるが、りんと邪見だけ残すのはどうも不用心過ぎる。



「どうしようか…」

 
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