私は奈落の造りもの

□8.永遠の闇
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殺生丸の少し先を進む蓮香は白霊山の奥深くから漏れ出してくる邪気に顔をしかめた。

相変わらず奈落の邪気は心の奥をかき乱し、嫌な気分にしてくれる。

少しずつ進むにつれ、邪気の濃さが増して心の中に渦巻く何かが更に強く心を揺さぶった。




「蓮香…?」

「大丈夫、何でもないわ」




蓮香の様子に気づいた殺生丸が後ろから声をかけるが、蓮香は振り返らないまま返事を返した。


なに…この気持ち…


ドクン……ドクン……


白霊山の壁が強く脈打つ。

徐々に狭くなる空間。

殺生丸と蓮香はお互いの距離を詰めて警戒する。

だが、いきなり盛り上がってきた壁の一部に仕切りを作られてしまった。

蓮香は羽から落ちるが、綺麗に着地すると、足が変に柔らかい壁に飲み込まれ始めた。




「殺生丸っ!助け…て」




四方八方から伸びてきた触手に両手の自由を奪われ、身動きが取れない。

殺生丸に助けを求めるも、気味の悪い壁に声が阻まれて届かない。




「いやっ!殺生丸、殺生丸!」




足元を飲み込み始めた床や壁は既に蓮香の腰まで迫っている。

もはや、体がすべて飲み込まれるのは時間の問題だった。










「奈落…」




静かな怒りの籠もった呟きとともに闘鬼神を腰から抜き、壁に切っ先を向ける。

蓮香は奈落の分身だ。

奈落からすれば蓮香の体を操ることなど造作もないことなのだ。

それに、犬夜叉と戦っている最中にでも奈落に盾として使われでもすれば確実に一発で消し飛ぶ。

最悪の場合を考えながら夢中で闘鬼神を振るうが、傷さえも付かない壁にだんだんと苛立ってくる。

逸る気持ちとは別に焦る気持ちのせいで攻撃が荒々しい。


蓮香…


うねり、脈打つ壁は殺生丸を嘲笑うかのように刃を跳ね返す。

暫く攻撃し続けてようやく殺生丸の攻撃の手が止まっていた時、壁に変化が起きた。

もしかしたらと剣を握り直し刃を振り下ろした。


一発で簡単に崩れた壁を不審に思ったものの、蓮香を助ける事を優先する殺生丸は壁を崩して先へ進む。

 
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