私は奈落の造りもの

□6.聖なる山
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白霊山か…


蓮香を探してたどり着いた殺生丸は切り立った崖から霊山を見上げ、考えを巡らす。


奈落は…蓮香はどこだ?


周りを五感で探るが見つけた気配は弟のもの。

すぐそこに来ている事に気づくとさっさと立ち去ろうと思ったが、聞き慣れた声に引き止められた。




「殺生丸様ー!」




ちらりと後ろを見やると、案の定連れの1人と2匹の姿。

それに、赤い衣が見える。犬夜叉だ。




「……」

「殺生丸っ、何でりんと邪見を置いていった?危ねぇだろーが!」

「……」




何時ものごとく、喧嘩腰な犬夜叉をしれっとした顔で無視する殺生丸。

そんな殺生丸にいっそう腹を立てた犬夜叉は眉間に深い皺を刻む。




「犬夜叉、もう少し言い方というものは無いのか」




弥勒が犬夜叉をたしなめると、ふてくされた顔になったが、殺生丸を睨むのは忘れない。

何とも、子供な殺生丸の弟。

一行も犬夜叉の行動に呆れ気味の…いや、呆れた視線を送る。

そう言えば…と弥勒が仕切り直すと殺生丸もかごめ達も弥勒に注意を向けた。




「殺生丸、1つ聞かせてほしい。
なぜお前が奈落の分身である蓮香を連れている?」

「法師では聞くが、蓮香を連れている理由をなぜ貴様が知る必要がある?」




弥勒の質問に瞬時に言葉を返すと、今度は殺生丸が弥勒に問いを投げかける。

弥勒はどんどん機嫌が悪くなる殺生丸に圧倒され、黙り込む。




「邪見、りん、行くぞ」

「はっ、はい!」




機嫌が明らかに悪い主に冷や汗を流しながら応じる。

弾かれたように飛び上がり、返事をすると、阿吽の手綱を引きながら去っていった。









「あの〜殺生丸様?」

「何だ」

「結界がキツくなってませんか?」




人頭杖にすがりつきながらヘタヘタと歩きながら殺生丸に続くが、殺生丸が止まる気配はない。

りんが止まって欲しいと言えば止まってくれるだろうが、相手は邪見だ。

普段、見ていて分かるようにりんや蓮香には慈悲の心で接するするが、邪見には接するるどころか邪険に扱うのだ。

少し落ち込む邪見にりんは気づくことなく話しかける。



「邪見様どうしたの?」

「りん…お前は何も感じんのか……」




もはや、怒鳴る気力もない。

それほどまでに白霊山の霊力にやられているのだ。




「何も感じないよ」




にっこりと笑いながら答えると、りんに訴えてもダメだと悟った邪見は地面にへたり込んだ。

 
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