私は奈落の造りもの

□5.仕組まれた恋
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殺生丸一行は、ここ数日奈落との接触も無く、平和に旅を進めていた。

そして今日はりんの希望で湖に来ている。



「きゃー冷たーい!」

「こりぇー、りん!あまり遠くに行くでないぞ」



今日ばかりは、邪見もりんと一緒に遊んでいる。



「とても静かね」



嵐の前の静けさとでも言うように静かでのどかな1日。

何の気配も感じない蓮香はそう思って隣りに座る殺生丸に話かけるが返ってきたのは否定の返事。


殺生丸は何かが起きることを予期しているかのように静かに腰を落ち着かせていた所から立ち上がる。

すると、強い風が吹き荒れ殺生丸の白銀に輝く髪を揺らす。

この風には覚えがあった。



「よう。殺生丸、蓮香」

「神楽姉様!どうしてここに?」

「少しお前に話があってな。殺生丸、蓮香借りてくぜ」



それだけ言うと、殺生丸の返事を待たず蓮香の腕を引っ張りながらその場を後にしようとする。

殺生丸の抗議も聞こえない所を考えれば一時的に連れていくことへの同意だろう。




殺生丸の姿が見えないところまで


「神楽姉様、話とは?」



蓮香が尋ねると、言いにくそうに顔を歪めた。



「落ち込むなよ」



蓮香が深く頷いたのを確認して話し始めた。



「奈落が蓮香を産み出した理由はー




殺生丸と親しい仲にするためだったんだ。あんたは、今まで奈落の掌で踊らされてたんだよ」

「私が、、、?」

「あんたは、殺生丸の弱みだ。
奈落はそれを利用して何かを殺生丸に仕掛ける積もりだ」



それを聞き終えたとき、頭の中が真っ白なった。




結局、奈落の分身の私は、殺生丸のお荷物でしかないってことだ…。



こんな風にしか考えられなかった。





私は造り物の体と心を持つ奈落の分身。





私の全てが奈落の意のまま…。





再び奈落から逃れられない運命だと知らされた瞬間だった。



「神楽姉様…私達分身は、死ぬ定めにあるのでしょうか?」

「いや、あたしたちは自由になるさ。奈落は先に死ぬ」




そうは言ったが奈落は、そう簡単には死なない。

それに、奈落が死んだ時命の結びつきが強い蓮香が道連れにならない保障はどこにも無い。

 
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