短編

□2人だけの秘密
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「よろしくお願いします」

1人の愛らしい少女が男に頭を下げて礼をする。
その様子を見た男が微笑む。

「蓮香、
 そんな堅苦しい挨拶はせんでよい」

蓮香と呼ばれた少女は、驚いて顔を上げる。
すると、男の屈託のない笑顔が目に入る。

その表情には、優しさもありながら数多の戦いを生き残った強者の風格もあった。

「ですが...」

「なんだ、不服か?」

「あっいえ…」

そう言われ慌てて否定する。

「まぁ、
そんな堅くなるなと言うことだ。
お前には殺生丸の侍女をやって貰おうと思ってな」

「殺生丸様のですか...」

「何時も殺生丸の侍女は長続きしなくてな。今度はお前と言う訳だ」

少し困惑した顔になって言うと、蓮香は「頑張ってみます」と返事をした。

その返事だとばかりに笑顔になって「頼んだぞ」と一言。

その笑顔を見て蓮香は、何故この大妖はこんなにも笑顔が絶えないのかと疑問を抱くのだった。












それから15年の時が流れたある日ー

「闘牙王様、失礼します」

「おぉ、蓮香、まっておったぞ」

襖を開けて中に入ると、闘牙王が胡座をかいて座っていた。

優しく笑みを向けられると、蓮香も微笑する。

西国を治めるこの大妖は、15年前と変わらないと思う。


優しさも



強さも...




蓮香が、闘牙王と向き合って座るとおもむろに口を開いた。

「そう言えば、お前は10年間も殺生丸の侍女を勤めているのだな」

思い出したように蓮香に向かって呟く。

「そうですね。
闘牙王様は殺生丸様の侍女が長続きしないとおっしゃっていましたが、そんな事はないと思いますよ。

ただ、少しだけ気難しいところがあるだけですよ」

「そうか、ならば良かった。

おぉ、そうだった。用件を忘れるところだったな。
最近、殺生丸の様子が可笑しいとは思わんか?」



 
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