短編
□小さな不安
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「きゃぁー!殺生丸先輩ー!」
「今日もステキー!」
校門の前には女子生徒の人だかりができていて、黄色い声援を浴びてその真ん中あたりにいるのは、私の彼氏。
毎朝これだとちょっとなぁ、、、。
「はぁ」
大きく溜め息をつく。
「どうしたの?
蓮香、最近元気ないよ?」
一緒に登校していた友人の香奈美が蓮香の溜め息を聞いて顔を覗き込む。
「なんでもないよ。ただ、校門の前でこれはちょっと、、、って思わない?」
「確かに、、、」
毎朝の様に女子生徒の人だかりができ、黄色い声援が飛び交う横を通って登校するのはいい気がしない。
それでも、学校に入るには此処を通るしかないので、皆我慢してこの横を通って登校しているのだ。
だが蓮香がこれを嫌う、一番の理由は、、、
自分が殺生丸の隣に居ることを許されていない気がすることだった。
私の彼氏なのに!
今すぐにでも、此処でそう叫びたい。そう思ったが、その思いは胸の内にしまい込んだ。
殺生丸とは、付き合ってはいるものの、周りの者は誰もその事実を知らない。
否、知らせていないのだ。
むしろ、隠している。
それは去年殺生丸と噂になった一人の女子生徒が、学校中の殺生丸が大好きな女子からイジメを受けたと言うことがあってのことだった。
だが、そのことを言えないのが蓮香の最近の悩みの種にもなっていた。
「貴様ら、余程殺されたいと見える」
香奈美と話していると、殺生丸の殺気を含んだ声が聞こえてきた。
彼も足止めを食らってイラついているのだろう。
相当怒ってるな、、、
機嫌治すの大変かもしれないなぁ
あ゛ーもうっ!
心の中で悪態をつきつつ校門をくぐる。
校門をくぐって、校舎に歩いていく間も背後からは女子達の黄色い声はずっと耳に入ってくる。
あぁ、もうイヤ、、、。
私だって、
殺生丸と一緒に登校したいよ。
学校で話したりしたいよ。
「はぁ」
また、一つ溜め息をつく。
「もう、蓮香ってばまた溜め息つく〜」
もう少し、楽しいこととか考えられないの?とか言いつつ、心配してくれる香奈美。
今までに何度か、香奈美なら、、、と思って殺生丸のことを話そうとは思ったものの、殺生丸との約束を破れる筈もなく、言えなかった。
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