短編

□俺は諦めねぇ!
1ページ/11ページ

「大兄貴〜今回の戦、そんなに楽しくなかったぜ?すぐに死んじまうんだもんよぉ」

女の様な姿をして刀を持っている男が、大きな鉾をもった黒髪の青年に話し掛ける。

大兄貴と呼ばれた青年は長く結われている三つ編みを翻し、男に顔を向ける。

そして、残忍な笑顔を浮かべる。

「良いじゃねぇか、蛇骨。こんな簡単な仕事で大金が手に入るんだぜ?」

「でもよぉ〜」

2人の周りは、血の海。

そんな場所の真ん中にたくさんの返り血を浴びた2人が何事もなかったように話をしている。

何とも場違いな2人の表情。

しばらく話をしていた2人だが、ふいに険しい表情に変わる。


「まだ生きている奴がいるのか?」

何かが居る気配がある、、、

「どうせすぐに殺してやるさ!!」

「大兄貴っ!」

いきなり蛮竜を振り、近くの木々をなぎ倒す。

その動きには仲間の蛇骨も驚く。

危ねぇなー
少しは仲間が近くに居ることを考えて振ってくれよぉ〜

倒れた木々のの間から現れたのは、全身黒の動きやすい着物を着た人物。

しかも、黒い布で顔を覆っていて、目だけを覗かせている状態のため、男か女かの判別ができない。

「へぇー。どこかの城が差し向けた忍って訳か」

「蛮骨の大兄貴、こいつどうするんだ?」

忍は静かに佇み、鋭い目で2人を見つめている。

「敵の忍だったら殺す」

蛮骨が静かに冷笑を浮かべて恐ろしいことを口走る。

「おいっ!お前は、俺達の敵か?!」

だが、忍は何の反応も示さない。

「蛇骨、殿様から忍が居るっての聞いたか?」

「聞いてないと思うぜ」

「なら、良いな」

自分の味方でないことを確かめると、蛮竜を振り回し、忍に迫る。

さしずめ、あれが七人隊首領の蛮骨かー

蛮骨と忍の距離が近くなっていく。

そして、蛮竜が空を斬る。

忍は、素早く蛮竜の刃から逃れる。

早いっ!!

忍にとって蛮骨の動きは想像以上に早かった。と言っても、容易に刃を避けることは出来るほどの早さだが。

しばらくの間、蛮骨が蛮竜を振り、忍がそれを避けると言う感じで争っていたが、蛮竜の刃が忍びをとらえることは無かった。

「、、、はぁ、はぁ」

「大兄貴っ、大丈夫か?」

遂には、息が切れ始める。

くそっ!あいつ、すばしっこ過ぎるんだよっ!

一方忍は、攻撃して来る訳でもなく、息が切れて地に膝をついている蛮骨を見ているだけ。

すると、何処からか蛇の様な刀の刃が飛んできた。

忍は、飛び退いたが、刃が頬をかすったため、顔を覆っていた黒い布が切れて取れてしまった。

忍の顔が露になる。

強い光を称えた漆黒の目。
腰まである栗色の豊かな髪。
どんな男でも一度は味わってみたいと願ってしまう形の良い唇。

なんと、今まで蛮骨が蛮竜を振っていた相手は、女だったのだ。

それも絶世の美女。

「うわぁぁぁ!女ぁぁぁ!?」

蛇骨は自分が斬りつけたのが女だとわかると絶叫し、蛮骨は口をあんぐりと開けて固まっている。

だが忍は、2人の様子など気にも留めていないようで、頬の切り傷を触って手に着いた血を不機嫌に見つめる。

そして、蛇骨に向かって小さな鉄の刃を飛ばす。

手裏剣を投げたのだ。

「女ぁぁぁ!危ねえだろーが!!」

相手が女と言うこともあり、蛇骨は完全にキレている。

「煩い!」

気高く透き通った声で蛇骨を一喝。

その声で我に帰った蛮骨が忍に問い掛ける。

「お前、名前は?」

「蓮香」

意外にすんなりと答えるがその声は冷たい。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ