短編

□半妖
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「犬夜叉ー!外でなにしてんの?今日、朔の日でしょ?」

一人で外に立っていた犬夜叉に、楓の家から出てきたかごめが、声をかける。

「あぁ、わかってらぁ。少し用を思い出した。行ってくる」

犬夜叉は、面倒くさそうに言葉を返し、さっき見ていた森の中に入っていく。

かごめは、そんな犬夜叉の背中をその場に残り見送った。






「もー。どうしたのよ犬夜叉」

犬夜叉のことをグチりながら楓の家に入ったかごめ。

「何かあったのですか?」


「犬夜叉、どっか行っちゃたのよ」

「かごめちゃん、心当たりないの?」

「うん、、、」

珊瑚にそう尋ねられ、急に不安になってしまい、かごめの顔が曇る。

今日は、朔の日かごめが心配するのも無理はない。
犬夜叉は、無理をして人間の姿のまま戦うことだってある。

どうしても、心の中にある不安を拭い切れなかった。







そのころ犬夜叉は、森の中を走っていた。

この匂い、間違いねぇ!

「姉貴!いるんだろ!」

「犬夜叉?」

思いっきり大きな声で呼び掛けると、上の方から聞き馴れた声が聞こえてくる。
そこには、予想通りの人物の姿。

蓮香は、木の上から降りて来て、犬夜叉の前に立った。

「姉貴、どうして居るんだよ」

「ここにいちゃダメなの?」

蓮香に問われて困惑した顔になる。

だが、すぐに蓮香の腕を引いて村へ戻ろうとして歩きだすと蓮香は、犬夜叉に従い、村へついて行った。









楓の家に帰って来て、

「えーっ!」(弥・七・珊・か)

「犬夜叉、お姉さん居たの?」

以外に驚かれて困惑気味の蓮香。

そんな蓮香の近くに弥勒が来て、蓮香の手を素早く握る。

そして、お決まりの一言。

「それにしても、お美しい!どうか、私の子を産んでくだされ」

「!?」

蓮香以外は、呆れ顔。
いつも同じことをして、珊瑚に怒られるのを知っているからだ。


バン!


皆の予想通り、珊瑚の飛来骨が、弥勒の頭に見事命中。

「いたたたっ」

弥勒は、痛みに顔を歪ませ、苦笑い。

その様子を見ていた蓮香が、苦笑いしながら頭に?を浮かべている。

蓮香の考えていることに気づき、かごめが説明する。

「いつものことだから」

そう言われても、、、と思うが、それにしても、面白い人達だなとかごめ達を見て心の中で笑う。


「それはそうと、自己紹介まだだったわね。私は、かごめ」

気を取り直したように、かごめが言うと、皆もそれに続いて自己紹介をする。

「オラは、七宝じゃ」

七宝って言うんだ!かわいい〜

「弥勒です」

「私は、珊瑚。こっちが、雲母」

雲母もかわいい〜
蓮香は、その場にしゃがんで雲母を撫でる。

しばらく雲母を撫でていたかったが、それを我慢し蓮香も改めて自己紹介する。

「犬夜叉の姉の蓮香です」



全員の自己紹介が、終わって蓮香は、かごめと珊瑚と一緒に、話していた。

「蓮香さんは、人間なんですか?」

人間の姿をしている蓮香を疑問に思ってかごめが訊いたが、次の瞬間後悔する。

犬夜叉は、自分が、半妖だと言うことを気にしていることを思い出したからだ。

「いいえ、半妖よ。今日は、朔の日だから、人間の姿なのよ」

しかし、犬夜叉みたいに気にしている様子は無く、かごめはほっとする。






「犬夜叉。私、帰るね」

いきなりの、蓮香の一言に一同が驚く。

妖力を失っている間は、普通の人間と同じことで、しかも、蓮香は女。
一人で森を帰るというのは無理な話だ。


「蓮香さん!なに言ってるの!」

「ん?」

いたっていつも通りという感じの涼しい顔をしている蓮香。

「蓮香さん、1日くらい泊まって行きなよ」

かごめと珊瑚の言うことにも耳を貸さずに蓮香は、楓の家から出て、

「大丈夫だから心配しないで」

そう言って行ってしまった。


「心配だね」

「ちょっと!犬夜叉?
蓮香さん、行ちゃったよ!? 止めなくて良かったの?」

かごめが、犬夜叉に訊いてみると犬夜叉は、一人落ち着いた様子していた。

「姉貴なら、大丈夫だぜ」

今までの落ち着いた様子のまま、犬夜叉がそう言った。

「どうしてそう言えるんじゃ?」

「姉貴は、人間の姿でも十分戦える」











さてと、、、どこで寝よう、、、

そう考えながら歩いていると、前の草木が揺れ、蓮香は、揺れた草木を睨んで、身構える。

みつけたー!美味そうな女ぁぁ!

次の瞬間、鬼が草木から飛び出し襲ってくるが、始めの一撃をいとも簡単にひらりとかわした。

「うるさーい!」

蓮香は、襲ってきた鬼を勢いよく、蹴飛ばすが、蹴飛ばした鬼の後ろに三匹の鬼が現れる。

「やばいな、、、」

そう呟いた直後、鬼の大きな手が
蓮香に向かって飛んできて、軽いくて華奢な蓮香の体は、簡単に叩き飛ばされてしまう。

よろよろと立ち上がった蓮香の口元には、血が滲んでいる。

叩き飛ばされた時に、口内を切ったのだろう。

蓮香は今のままでは勝てないと分かり、走って逃げてはいるものの、鬼達は、しつこく追いかけて来る。

もう、、、体力の限界、、、

息を切らしながら逃げていたが、
ついに、鬼達に追いつかれてしまった。

鬼は、蓮香に向かって容赦なく爪を振るう。

その大きな爪が蓮香の足を傷つけ、あまりの痛さに走れなくなってしまう。

「くっ、、、ここまでかっ、、、」

歯を食いしばり、

死を覚悟した刹那ー
視界の端に、琥珀色の目を持った、美しく白銀に輝く、妖を見た。

「!!」

そしていきなり、鬼達の断末魔が、森に響き渡った。

何が起こったかは、分からなかったが、鬼達が死んでしまったということは、わかった。

それに安堵し、意識が朦朧とする。



薄れていく意識の中で、蓮香は、暖かいぬくもりに包まれた気がした。
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