トリストっ!

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波乱の予感…?







-姫香目線-





優姫が翔ちゃんの股関目掛けてボールを投げた瞬間気を失ってしまった。一方、翔ちゃんもかなり痛かったのか股関を押さえて前屈みになり辛そうな顔をしている。…御愁傷様…。



「翔ちゃん大丈夫?」

「あ、ああ…。大丈夫じゃねぇかも…。」

「翔、どんまい…」



取り敢えず優姫をどうにかしないと…。

少し考えていたら目の前の優姫がふわっと宙に上がった。何事かと上を見れば、音也が優姫を軽々と抱えているではないか。いわゆるお姫様だっこというやつをして。いや、べ別に羨ましくないよ。ホントに!



「俺が保健室に連れていくよ」

「あ、うん。お願い!」



うちじゃ運べないし、今の翔ちゃんにも多分無理だろうと思い言葉に甘える事したに。なんだかこの二人、絵になるな。優姫、喋らなければ可愛いし。絶対本人には言わないけどね。言ったら調子に乗るし。



「ぉお…」



相変わらず翔ちゃんはまだ激痛と戦ってるようだ

「音也、先に保健室に行ってて!うち、翔ちゃん見とく!後から行くから」

「うん、分かった!」

「あ、優姫に何かしたらぶっ飛ばすよ?」

「ど、努力する!」



そう言葉を残し、音也はうちらに背を向け校舎へ消えた。



「…」



チラッと横を見れば、涙目の翔ちゃんと目が合う。



「まだ痛いの?」

「あったりめえだろ!!くそっ、あいつ本気で投げやがって…っ!」

「翔ちゃんの自業自得だよ」

「う…っ。わ、わざとじゃねえんだぞ…」

「はいはい。痛み引いたなら保健室行くよ」

「なっ!おい待てよ!………ぐえっ」



すたすたと進めていた足を急に止めると、うちの背中に翔ちゃんが体当たり。翔ちゃん、よく変な声出すね。

それがおかしくてがはがは笑ってやったら、「何で急に止まるんだよ」って真っ赤な顔で怒られたけど。その姿も「ウケるwwww」です。









-音也目線-



「先生ー」

ガラッと保健室のドアを開けるが、中には誰もいない。先生どこに行ったんだろう…。勝手にベッド使っちゃってイイかな?まあ、いいよね。心の中で自問自答をしながら優姫をベッドに運ぶ。優姫はちっちゃいから軽いだろうなあとは思ってたんだけど、身長以前に軽すぎる。あまりの軽さに自分の手を疑ったよ。ちゃんと食べてるのかな

優姫をベッドに寝かせ、優しく布団をかけてあげる。

俺は横にあった椅子に腰をかけ、取り敢えずじぃーっと顔を見つめる。本当に綺麗な顔立ちしてるなぁ。



「あ、ここ腫れてる…。」



ふと、先程出来たであろうこぶを見つける。慌てて立ち上がり近くにあった救急箱から湿布はないかと中を漁ってみる。

あ、あった。



どうやら最後の一枚のようだ。

器用にシールを剥がし、優姫の前髪をかきあげ腫れている場所にそっと湿布を張る。

『んん…』

「…。」



なんか、緊張する…。俺、この後どうすればいいんだろう…。そう考えていた時、タイミングよくガラッと扉が開き二人が保健室に入ってきた。



「音也、優姫はどうだ」

「それがまだ目が覚めなくて…」

「そうか…。」





-姫香目線-



どうやらまだ目が覚めないようだ。

そんなに打ち所悪かったのかな?まあ、顔面ヒットだしね…。

そのせいか先程から二人が凄く暗い。翔ちゃんは罪悪感のせいだろう。でも、男ならもっとシャキッとして欲しいよね。と言うことで二人を殴っちゃお〜

ぐっと手に拳を作り、力を込める。そして翔ちゃんから順にストレートパンチを喰らわした。まあ、背中にだけど。



「いてっ!!」

「いたっ!!」



なかなかの手応えでした



「いきなり何するんだよ!!」

「二人がくよくよしてるからでしょう!」

「うぅ…痛い…」

『んぅ…』



隣でぎゃあぎゃあやっていると優姫が小さな呻き声あげる



『ご…め……さい…っ。』

「優姫…?」

『うぅう…っ痛ぃ…ょ…』



瞳にうっすら一筋の涙が。その涙を拭い名前を呼んでみるが起きる気配はない。先程から呻きが大きくなるばかりだ。もしや、ぶつかった場所が痛むのだろうか…

翔ちゃんは訳が分からず眉間にシワを寄せている。一方音也は心配そうに手を握っていた。これ、優姫が知ったら失神しそうだな…。



『や…めてっ…うぅあっ!』



にしては痛々しい声をあげる優姫。額には汗が滲んでいる。本当にこれは痛みのせいなのか…?こんな事は初めてだった為どうしたらいいのか分からなくなる。





「優姫!」



そんなうちを余所に、翔ちゃんががしりと優姫の肩を掴む。乱暴だな…「う…ん」と声をあげながらゆっくり瞳を開ける優姫。



「よかった…。お前うなされてなから…」



翔ちゃんを見て目を見開く優姫とは反対にホッとしていると、急にガタガタと震え出す。

『ぅあ…っ』

「…優姫……?」



どん、と翔ちゃんを押し返し、ベッドの端で縮こまり震えだす。一体何が…



『ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…っ!いい子にしますから殴らないで…!!』



「優姫どうしたのっ!」

『ごめんなさいごめんなさい…』



もしかして――…。

そう思った時、音也が優姫に近づき触れようとした。が、優姫はその手が近づいた瞬間ビクッと肩を大きく跳ねさせ一層激しく震えた。顔は涙でぐちゃぐちゃだ。それを見た音也は腕を引っ込める。



『痛い…もうやめて…っ』



ズキっと痛む胸。今の優姫を見ているとあの頃を思い出す。

――――助けなきゃ。

そう思ったうちは強く優姫をぎゅっと力強く抱き締めた。



『ごめんなさいごめんなさい…』

「優姫…、もう大丈夫だから…っ」

『ぁあぁあ…』



震える優姫に、そう優しく呟いく。すると徐々に震えは止まり、最後にはがくりと気を失なってしまった。時間を刻む音だけが部屋に響く。



「なん…だったんだ…?」



再び優姫を寝かせ、毛布を被せていると翔ちゃんが口を開いた。だけどごめん…。それはうちからは話せない。



「優姫にもいろいろあるんだよ。あ、二人にお願いがあるの」

「……」

「この事は誰にも言わないこと。あと、優姫本人にも」

「……。」



何かを察してくれたのか二人は黙って頷いてくれた。取り敢えず、優姫が目を覚ますまで待っている事に。「俺たちも待ってるよ」って音也に言われたけど断った。二人は本当に優しいね。



「…救えなくてごめんね…」

二人きりの保健室。優姫の髪に触れそっと呟いた。そして、ゆっくり目を閉じる。







―――――――――







(′・ω・`)







2012/10/11

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