トリストっ!

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Aクラスのプリンス







『試験かー…』

ただいま試験をするため準備をしている龍也さんを待機中。職員室の誰のか分からない席に腰をおろしただじぃっと待っていた。ちょっと少しドキドキしてます――。



『ってドキドキしてねぇよ!!見るな!見るんじゃねぇえぇ!』

「いきなり何!?お前なんかみるか!!自惚れんなっ」

『…さりげなく酷いな…。』

「あの…。私、ここに居ていいんでしょうか…?」

「全然っ!!居てくれた方がいい結果出せそうだ!」

『うぬうぬ』



姫香の言う通りだ!たまにはイイコト言うじゃねえか…』

「たまには、とかうざっ」

『…』

「いや、そんなキモい顔でポカーンとされても…。全部声に出てたから」

『あらやだ』

「死ねよ」

大阪のおばちゃんのように手を曲げてみれば笑顔で死ねよなんて言われてしまった。怖いわぁーこのこ怖いわぁ。アメリカンジョークもきかないなんてねぇ。

そんなやりとりを見ていた春ちゃんは、急に私達の間に腕を広げ少し声を荒げ言った。

「ふ、二人とも喧嘩はダメです!!」

どうやら、今のやり取りが春ちゃんには喧嘩に見えたらしい。これはいつものやり取りであって喧嘩ではないのだがなぁ。最初の頃はみんなそう見えるのかな?私達にとってはただのじゃれあいに他ない。



『違うよ春ちゃん。僕ちん、姫香とちょー仲良しだからっ☆』

パチンっとウィンクをかまし、姫香の手をぎゅっと掴んだ。最近自分が嶺ちゃんのキャラみたいだなぁと改めて思ってしまう。あ、嶺ちゃん分かるよね?寿さんだよ!!!

チラッと姫香を見てみれば死にそうな顔をしている。

「おえっ」

『ヒドッ』



なんだよその拒絶しているような反応は!!!私を批判すると言うことは嶺ちゃんを批判すると同じだぞ!!!……あ、先輩たちにも会いたいな。

数分雑談等をした時、ガラッと扉が開く音がした。

「よし、試験始めるぞー。最初は筆記試験だ。お前ら、全力で挑めよ」



準備が終わったらしい龍也さんが、手に用紙を持って職員室へ入ってきた。

「うぃー」

『(キリッ)』

「ほれ。カンニングするんじゃねえぞ。…おし、始めろ」



用紙を渡すと、始まりの合図を出した。ていうか、カンニングなんて、そんな…



『…』

「…」

『…(チラッ』

「お前は言った側から…」

『いたっ』

龍也さん最低!!か弱い乙女に手をあげやがった!バシっていい音出たぞオイ!!ギッと睨み付ければ目を反らされた。なんでだよ!!!心の中でぎゃあぎゃあ言ってたら隣から「ぷ」っと声が聞こえ、見てみたら口に手をあてわざとらしく笑う姫香と目があう。

『…姫香ぶっ殺す』

















『終わったー』

なんやかんやあったが無事、筆記試験終了。難しいかも、と思ったが、以外と余裕だった。伊達に作曲してるだけあるからね!ふははは!!!



「次は歌唱力を調べる。お前ら、レコーディングルームで待ってろ。」

『レコーディングルームはどこでしょうかー』

「ああ、そうだったな。七海、連れていってくれ」

「は、はいっ」

プリントを集めると次の指示をだす。ていうか歌唱力って…。私、作曲家コース希望なんだけど…。まあ後で言えばいいか。そそくさと貰った制服を持ち職員室を後にする。



「あの、優姫さん、姫香さん」

三人でレコーディングルームへ向かう途中、遠慮がちに話しかけられた。

『なあに、春ちゃん。てゆうか、優姫でいいよ』

「うちも姫香でいいよっ!」

「あ、じゃあ…ユウちゃんとヒメちゃんで」『よろしい!それで、どうしたの?』

「はい、お二人はどうしてこの学園へ…?」

やっぱり、聞きたくなるよね

季節外れの編入なんてそうそういないし…。でも、そんな容易く話しちゃいけない気がする。例え話したとしても、林檎ちゃん達のように信じてくれるとは限らない。いや、春ちゃんは優しいから信じてくれるとは思うけどさ!!!



『んー、色々あってね。今はまだ話せないけどいつか、ね』

「はあ…」

「まあ、細かい事は気にしないで!あ、ほら。ここじゃない?レコーディングルーム」

お、姫香話そらすの上手いな!!



「あ、ここじゃないです」

『え、違うの?どうみてもレコーディングルーム…。あ、ほらレコーディングルームって書いてる。もう春ちゃんたらお茶目☆』

「お前きもいな」

春ちゃんの肩をつん、と指でつつく。笑いながら言う姫香は無視だ無視。



「実はこちらのレコーディングルーム、プロの方専用なんです」

「プロ?」

「はい。よくシャイニング事務所の方々が来るんですよ」

『へースゴいな』

「多分、奥のレコーディングルームだと思います」



そう言って春ちゃんが指差す先は正面の奥。と言うか、奥過ぎてよく見えない。早乙女学園、広すぎるってば…。ナマケモノな私はだんだんと歩くのがめんどくさくなってきた。何度もはぁと溜め息をつき、のそのそと歩いていたら、「七海ー!!」と春ちゃんを呼ぶ声がした。私が呼ばれたわけではないが、反射的に振り向く。

そこには、爽やかな笑顔と共にさらさらな赤毛を揺らしながこちらに向かって走る少年の姿が。

「おい、一人目のプリンスだぞ!」

ボソッと姫香が耳元で呟く。どきどきと心臓が脈打つのが分かる。だ、だってそこには…ほら…、あいつだよ。みんな大好き



「一十木くん!!」



そう!一十木くん!!愛しきまいえんじぇるっ!!あぁ、眩しい!笑顔が眩しいよ!春ちゃんもいるから輝きが2倍に…っ!!…くっ!

「どうしたんですか?」

「なんか、歩いてたらちょうど七海が見えたから」

笑顔いただきましたぁあぁ!

少し照れ臭そうにはにかむ彼はまだ私達に気付いていないようだ。そう思った瞬間、ばっちぃと彼と目が合ってしまった。

「そこの二人は?見ない顔だね」

二人の会話を母ような微笑ましい眼差しで眺めていた為少しびっくりしてしまった。私が見えるんだね。空気な私が見えるなんて。貴様何者!



「あ、実は編『初めまして一十木くん、ここに編入する事になった…。編入する事になるかもしれない米崎優姫です。よろしく!!』

そう言って、右手を差し出すと「俺、一十木音也!よろしくね」なんて、眩しい笑顔付きで握り返してくれた。うん。しばらく手洗わないようにしよう。あ、春ちゃん、言葉遮ってごめんね



「うちは桜井姫香。よろしくっ」



同じく握手をする二人。

あれ?姫香の方が握手する時間長くないか?あいつわざとだな…



「二人はSクラスになるの?」

『いや、今から歌唱力の試験を受けにレコーディングルームに行くところで結果はまだ』

「へー…あ、じゃあ俺も行っていい?」

『全力で来てくれたまえ』

「HAHAHAHA☆」

「あ、行くまえにちょっと中庭に行っていいかな?」

「中庭…ですか?」

「うん。実は、マサと那月を待たせてて…」

「なっちゃん…!」

『ダム様…っ!!』

内心、なぜかガッツポーズをしてしまった。「でも、時間が…」

「全然ある!バリバリある!」

『龍也さん、のろまだし!!』



チラッと不安そうに私達を伺う春ちゃんに満面の笑みでいい放ち行く事を促す。あ、龍也さんごめん…。名前だしちゃった

「では、少しだけ…」

「ありがとう、それじゃあ行こう!!」

音也の声と共に走り出す。走り出すと同時に、さりげなく音也のお尻に触れたのは秘密。でも、なんで走るんだろ。私体力ないんだけどな。途中転びそうになったが、恥ずかしい思いをしたくないのでぐっと踏ん張り体勢を戻した。この時何故か自分運動神経あるかも!?と嬉しくなった。まあ、どうでもいい話だけど。

約3分くらい走った時、2つの影が見えてきた。あのシルエットはダム様となっちゃんに違いない!!



「マサー那月ー!!」

「む」

「あっれぇー音也くん以外に誰かいますねぇ〜」

「みなさん!!」

「七海かそこの二人は誰だ。見ない顔だな、制服も見たことがないぞ」

「…。」

「おーい那月?」

春ちゃんに話しかけるダム様とは反対になっちゃんは何故かだんまりとしている。やっぱ私の顔じゃ抱きついてくれないかぁー…。自分で言って悲しくなる。なんて思ってた時、ばっとなっちゃんの目が光ったと同時にジリジリと私達に近付いてきた。あれ?私達の顔、そんなに気に食わなかった…!?

「ちょうちょう可愛いですー!!」

かと、思ったらがばっと二人を抱き締めるなっちゃん。口をあんぐりと開けている姫香と訳が分からずクエスチョンマークを浮かべているワタクシ。いや、びっくりしたのもあるんだけどね?思った以上に抱擁の力が優しかったんだよ。例の帽子の彼は「ぐえっ」とか言ってるからさ。



「翔ちゃんよりちっちゃいですねー」

「おうふ…」

『は、離してー?』



いくら優しい抱擁とはいえ、恥ずかしいもんは恥ずかしいし息苦しい。だがなかなか離してくれない。ならば、と腕をなっちゃんの背中に回しぎゅうううっとしてみる。しかし、それが逆効果だったようで「うわぁっ」と嬉しそうに二人同時に抱きつきながら持ち上げたと思ったらぐるんぐるんと回り始めた。

『ぎゃあぁ、なっちゃんんんん!!』

「あぁあああぁ!!スカート!スカートぉお!」

「し、四ノ宮、離してやれ」

「あ、すみません。あまりにも二人が可愛かったので…。」

ダム様の一言のお陰で動きはピタリと止まり、地面に下ろしてくれた。

「僕は四ノ宮那月。先ほどのように、なっちゃんと呼んでください。二人は何クラスなんですか?」

「那月、二人は編入生候補で、今から試験なんだって」

私達の代わりに音也が説明をしてくれた。手間が省けて助かるよ。一方ダム様はそうかとでも言っているようにふむふむと首を揺らしていた。

「そうなんですか?絶対合格してくださいねっ!」

『うぬ、任せろ!』

ぎゅっと右手を両手で包まれそう言われたので必殺優姫スマイルを全快に。ぶっちゃけこの笑顔、気持ち悪いと思う。なのになっちゃんは可愛いです!とか言って抱き締め出すし。つまり、なっちゃんの可愛いは宛にならないのだよ。



「俺は聖川真斗だ。よろしく」

「よろしくー、うちは桜井姫香!」

『ワタスは米崎優姫ニダ!』

「これから七海と一緒に試験の見学に行く予定なんだけど二人もどう?」

「僕は行きたいです!」

「…邪魔でないのなら…。」

『大丈夫大丈夫ー』

「一気に人が増えましたね。じゃあ、そろそろ行きましょうか」

「そうだなー」

Aクラスのプリンスに会えてご機嫌な私。試験、落ちる気がしねぇぜ!

『みなぎるぅうぅうぅ♂』

「最後の記号ヤメロ」

色々とみなぎってきた私は、みんなと共に奥のレコーディングルームへ向かう。3人も加わったせいか、さっきより視線が増えた気がした。特に女子の視線。はっ、今まさに逆ハーな展開なのだからな!!姫香いるけど。夢にもみた逆ハーに気分は最高潮。今なら何でもできる気がする。









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やっと、ちょっとだけプリンス達出ましたー







2012/09/30

編集2012/11/15

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