短編

□深紅
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ずきずきずきずき

首の傷口が痛む

鮮血が流れ出した痕は

真っ赤な道を作った

痛い、そう声に出したら

なんかいけないような気がして

僕は必死に唇を噛んだ



唇も血の味がする





「その顔、」

赤司くんは血で

真っ赤に染まった口の周りを

Yシャツの袖口で拭いながら

怪しく微笑む。

「その苦痛に耐える顔、

好きだな」



そして嬉しそうに

僕の傷口に指を捩じ込んだ



なんとも言えない音が

部屋に響き、

目からは透明な涙が

はらはらと零れる

バスケをしている為、

爪が短かったのは

救いだったと思う



「テツヤ、口開けて?」

赤司くんは痛みを堪える為に

しっかり閉ざされた唇を

器用に舌で割った。

赤司くんの口の中の僕の血と

僕の唇から流れた僕の血が

ぐちゃぐちゃと混ざるのが

気持ち悪くて仕方がない



堪えきれない痛みは

繋がれて無茶苦茶に

揺さぶられる快感、と一緒に

喘ぎ声に変わって

喉の奥からじわじわと溢れた



「息荒いね、痛いの?

それともこっちが気持ち良いの?」

そう言いながら

容赦ない動きで僕を揺さぶる

離れた2人の口を繋ぐのは

唾液と言うには難しいくらい

赤く濁った不純物

「ふ、ん…っ………く」

喋れない程の苦痛。



「テツヤ、好きだよ

僕は好きな人にしか

こんな事はしないからね、」

赤司くんはそう言うと

太股に歯を立てた



「…………赤司く――っ、」







赤司くんの愛は歪に歪んでいた。

一言で言うと、

―――――病んでいる

それでも僕は赤司くんを

愛しているし

耐えられない痛みではない



最近、生傷が増えた

それだけだ。

















「僕の事、好きだよね?」

シーツに散っているのは

濁りのない赤と、濁った白い体液

小さな肉片。

それでも僕は頷くんだ









君の歪んだ愛を受け止めよう、

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