短編

□咳する門に君来たる
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*咳する角に君来たる

「ごほっ・・・うへっ、熱あるし」


ほんと最悪、一人部屋で看病してくれる人もいない
ハルちゃんに頼もうかなと思ったけど
風邪を移してしまうのも可哀想だ
うーんと唸っても誰もいない、どうしたものか


―バタッ



勢いよく部屋の戸が開かれた・・・と思ったら
中に遠慮なく入って来たのは音也と翔ちゃんだった

「なまえ、風邪引いたの!?」

「何とかは風邪引かねぇって言うんだけどな」

私が風邪を引いたことは誰も知らないはず
何故音也が知ってるの?監視カメラでも仕掛けてあるの?
それよりも翔ちゃんの何気ない発言に若干悲しくなるよ

「二人とも黙れ」

「ひどいよ〜なまえ、せっかく看病しに来たのに!」

「音也が煩いから着いてきたんだけど、本当に風邪引いてるなんてな」

だから何故わかったんだ・・・
そんな表情を読んだのか音也は言い放つ

「トキヤが『なまえが熱を出して助けが必要です!』って
 小型テレビ見ながら叫んでてさ、とりあえず縛って部屋に置いてきたよ♪」

屈託のない笑顔で言う彼はまさに腹黒い男だ
うん、絶対敵に回したくないタイプ

「そんな話よりも看病だろ!なまえ、何か食べたか?」

「あんまり食欲ないんだ」

「じゃあゼリーなら食えるか?」

「あ、それなら欲しいな」

さっきまでバカにしてきた翔ちゃんは元気のない私を見て優しくしてくれた
うん、これぞ男気の中の優しさだね!

「なまえ、俺が食べさせてあげるっ!」

「いいよ、自分で食べれるから」

こんなときにまで無邪気な音也に笑ってしまう
が・・・

「俺が食べさせるんだよ!」

と翔ちゃんまで言い出す
え、何これ、別に一人でも食べれるんですけど?

「二人ともいいから!一人で食べれるから、ねっ?」

そう言うが一向に引いてくれる気配が感じられない

「翔はいいじゃん、なまえと同じクラスでいつも一緒に居れるんだからさ!」

「んなっ、そんなの関係ねぇだろっ!」

「俺知ってるんだからね!トキヤになまえを盗撮した写真貰ってるの!」

「ななっ、なんで知ってるんだよ!!!!」

「翔ちゃんそれほんと?」

ジトーっと目で脅すと、彼は怯まず音也に威勢を張り続ける

「つーか音也だっていつもトキヤと一緒になまえの盗撮ビデオ見てるんだろっ!!」

ねぇ、さっきからトキヤは何なの?
以前から変態なのはわかっていたけどここまでやるとはね
さっき音也が縛ってきたって言っていたのがとても良い気味である
まぁそれだけじゃ足りないけれど

「見てるよ、だってなまえの全てが知りたいもん」

当たり前でしょ、とでも言いたいような彼の顔
何がそんなに誇らしいんだよ!ちょっとドキッとしたじゃん!いい加減にしてよね!

「お、俺だってなまえの全て知りてぇよ!」

翔ちゃんまで・・・何よこの恋愛フラグ!
風邪で熱あるっていうのにまだ上げる気なのかっ

「も、もう二人とも落ち着いてよ!」

「「なまえは黙ってて(ろ)!!」」

「・・・・。」

もう勝手にしてください




あー、騒がれたせいなのかな、ちょっと熱あがってきたよこれ
うーんしんどい寝てしまえ

未だ終わらない二人の言い合いを子守唄に、頭が重くなるのを感じながら目を閉じ眠りにつく



「んっ・・・・すぅ・・・・zz」


「「!!」」

なまえの寝息が聞こえ、二人はハッとした

((やばっ、寝顔可愛い////))

普段ツンツンしている彼女、そんな彼女が憎まれ口も叩かず、ただ目を閉じて眠りについている・・・その寝顔はまさに天使と言えようか

「なぁ音也、勝負しねぇか?」

「何の?」

「どれだけなまえに尽くせるか、だ!」

「それってどういう・・・」

「あれだ、とにかくなまえの風邪が早く治るようなことした方が勝ちってことだ」

なまえに言い寄る音也は翔にとってはライバルだが、なまえの風邪も早く治したい。そこで翔が考えた策は、決着も着けれてなまえも早く治る方法、つまり≪なまえの風邪を治そう大作戦☆≫だった(ネーミングおぃ

「その話乗った!」

「よし、じゃあなまえが目覚めるまでに用意するぞ!」

「おう!」

ここからはなまえの部屋の中で別行動となった
お互いになまえが早く回復するよう、それぞれ考えて行動を取っている



―そして一時間後・・・


「・・・ん、あっつい・・・」

熱が高くなって起きたなまえに待っていたのは先ほどの二人の姿

「あ、・・あれ?まだいたの?」

「なまえ!ほら、タオル変えてやるよ」

心なしか翔ちゃんの雰囲気が更に優しさを増しているような

「さっき食べられなかったでしょ、ゼリー食べてから薬飲もう!」

こちらも温かい雰囲気を纏った音也・・・私が寝ている間に一体何があった・・・怪しい二人を問い詰めた方がいいのだろうけど、生憎そんな体力は今の私には残っていない
ここはありがたく優しさを頂戴しよう

「二人とも、ありがとう」

「お礼なんていらねぇから、早く治せよ」

「そうそう、早く元気ななまえになってよ」

ちょっとジーンときちゃったじゃない!
たった一時間の間に何が二人を変えさせたのだろう

「それでさ・・・」

翔が突然呟く

「俺達、なまえが寝てる間にそれぞれ早く治る方法考えてみたんだ」

「本当?」

「うんっ、だからどっちがいいか選んでね」

「わかった!」

こんなにも私のこと考えてくれるなんて、きゅんと高鳴った胸の鼓動を抑えながら二人の案を聞いてみる

「まず俺様からだ!なまえ、これを飲め!!」

「こっ、これは・・・」

そこには緑色に深く濁った液体
こんなの飲み物と言えるのだろうか

「学園長から貰った万能薬だ!1時間で治るらしいぜ!」

「おぉ・・・それはすごい」

思わず感嘆する

「けど・・・副作用があるらしくて、」

「な、何?」

なんだか嫌な予感しかしないんだけど

「一週間猫語になっちまうらしいんだ」

「却下。」

やっぱりか、そう呟いて落ち込む翔ちゃんには悪いが、そんな羞恥プレイをするほど早く治したい気にはならない

「じゃあさ、俺の案も聞いてよっ」

「うん、教えて」

「俺はねー、やっぱり汗をかくのがいいと思うんだっ」

「で?」

「なまえ、一発やろう!」

「却下。」

なんで音也なんかに、しかもこんな場所で私の初めて・・・おっと口が滑った
ていうかこいつ真っすぐに言い過ぎだろ!もっと包んで言えよ!

「音也てめぇ・・・!」

「だって翔はさ、その案、自分の力でなんとかしようって思ってないじゃん」

「くっ・・・・」

翔ちゃん、そんな悔しがるようなことじゃないと思うよ、こいつも言ってることおかしいんだからね?

「確かに、今回は俺様の負けだ・・・」

えっ、認めちゃうの?それは困る・・・!

「翔ちゃん、私そのドリンク飲むよ!」

するとブンブンと顔を横に振って彼は言う



「敗者に慰めなんていらねぇよ、なまえ、風邪早く治せよ」



翔ちゃん・・・







って格好よくもなんともないわ!!
ちょっと部屋から出て行こうとしないで、音也と二人っきりはまずい!!


―バタン



無情にも私の思いは通じず、翔ちゃんは扉の向こうへと出て行ってしまった
残ったのは音也と私・・・

「さ、なまえ、運動の時間だよ♪」

「ちっ、ちかよらないでぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「大丈夫、優しくするから・・・・ね?」

そんな天使スマイルで言われたら・・・何も言えなくなっちゃうじゃない・・・

「お・・・とや・・・」

「なまえ、早く元気になろうね」








音也の看病の甲斐あってか、次の日にはすっかり熱は下がった

だが今度は腰痛に悩まされるのであった





**あとがき**
音佳さまからキリリクいただきまして
ありがとうございました!
あ、あの、こんな話でよろしいでしょうか?
甘いのとギャグの一体化は難しくて
なんだかクオリティが低くなってしまって
すみませんでしたぁ><
音佳さまが音也好きだと何となく察知したので
勝手ながら音也落ちにしてしまいました♪
気に入って下されば、どうぞお持ち帰りくださいませ!

2012.11.24

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