蒼色音色

□第三章
1ページ/1ページ









『うわ〜、綺麗〜っ』

場所は南の島。

海と空は青く透き通っていて小鳥のさえずりも聞こえる。ここからでも見えるコテージもすごく………いい感じっ☆



「…何故、私があなた方と…」

私の隣、一ノ瀬トキヤ。

あれから私は数名の人に「お前正気か!?」とか「考え直せ!!」とか色々言われ続けたけど、そんな事で諦める私ではない!!なんと言うか…ゆいさんセンサーがみんなと作曲して歌いたいって告げているのだ!何言ってるんですか私!

そして先程から隣にいる彼の小言が絶えない。何を勝手に〜とか、迷惑です〜とか、うるさいくらいだよ全く。

『まあまあ、いいじゃんいいじゃん!細かいことは気にしないのっ』

「……はぁ」







「はいはいーみんな早く集まって〜」

林檎ちゃんの掛け声でぞろぞろと人が集まる。

「入学早々、大変だけど今日から2週間頑張ってねんっ!!今日は荷物の片付けと自由時間だからゆっくりしていいわよ〜」

『やたぁっ!!海っ海っ!!』

「ちょ、あなた…!」

林檎ちゃんが話終わったと同時にコテージへ走り出す。驚くトキヤはシカトして。

しかし、ぐいっと誰かに首根っこを捕まれてしまった。恐る恐る振り向けば林檎ちゃんがニッコリと笑っている…。可愛いけど怖い…

『り、林檎ちゃん?ゆいさんに何か用…?』

「うふっ」

『あ、あははは…』

うふっ、て言われましてもねぇ…?

「はいはい、みんな注目ー!!」

『およ?』

ざわざわと辺りが騒がしくなる。見てみれば所々「ゆいちゃーん」って手を振る生徒がいた。もちろん私は「はーい」って振り返したよ!!



「みんな知ってると思うけどAクラスに人気アイドル神園ゆいがいるわ。色々事情があってこの学園にいるけど、一応あなた達にとって先輩だから失礼ないようにね!困らせたりしたら私と龍也が許さないわよー?いいわね?」

はーい、とみんなが返事すると解散の掛け声をかける。なんで急にそんな事言ったんだろ。ていうか自分ももう行っていいのかな?そう思い、チラリと林檎ちゃんの顔を覗きこむがニコリと笑うだけで何も言わない。私どうしたらいいの?

『林檎ちゃん?私海に行きたいんだけど…』

「海の前に荷物を片付けなさい?」

『うん、じゃあ片付けに行くから!』

「……」

『…?』

「ゆいちゃん、あの七人とするんですって?」

『え…?うんっ!!』

「そう…」

『どうしたのー?』

訳が分からず小首を傾げればす、と私の耳元に顔を近づけ言った

「アイツ等に何かされたらすぐ言えよ…?俺の部屋で匿ってやるからさ」

『…っ!!』

「じゃあまたねんっ♪」

り、りり林檎ちゃんの男がこ、降臨なさった…っ!!

滅多に出さない林檎ちゃんの素顔。あまりの珍しさと、耳元で囁かれた事により思わずフリーズしてしまう。徐々に顔に熱が集まるのが自分でも分かった。

『………』

「おや、子猫ちゃん。こんな所にいたのかい」

『っ!レ、レンくん…』

「顔が赤いね。体調でも悪いのかな?」

『ううん!ゆいさん元気だよ!!!』

「無理は禁物だよ?子猫ちゃん。」

『うん、大丈夫!』

「みんな心配してる。さあ、コテージに行こう」

『はーい』

私は先ほどの事は無理やり忘れ、レンくんと一緒にコテージへ向かった。荷物も持ってもらい、少し申し訳ない…。別に自分で持てると言ったのだが「レディに重たい物を持たせるわけにはいかないよ」だって











『広い!!』

コテージに到着!!私達は8人グループと言う事で特別に大きいコテージを用意して貰った。そのせいでコテージの場所が遠い!!みんなのコテージからすごい離れてるんだけど…。歩いて3〜5分くらいかな?それにしても広すぎ!!中には既にみんなが荷物を片付けていた。

「ゆ、ゆいちゃん…!」

「あ、ゆい!!遅かったね!」

「やはり、男女共に一つ屋根の下と言うのは…」

「ふふ、みんなでお泊まり楽しみですね〜」

「……はぁ…」

「まあ、そんなに溜め息つくなよ、イッチー」

「まじでみんなで一つのコテージかよ…」

『みんな暗いぞー?よぉし、荷物も大体片付け終わったと思うし海に行こう!!』



私は適当に荷物を放り込みみんなを海に誘う。しかし、みんなの反応は微妙だった。つまんないの…。

『なんだよぅ!せっかくゆいが気をきかせて言ってるのに!!いいよーだ!春ちゃんと行くからっ』

私はみんなにあっかんべーをして春ちゃんの腕を引く。ちゃっかり二つの水着を持って。

目指す場所は勿論海!!!あ、でもその前に更衣室!!なんとなく春ちゃんの様子を見れば、少し困った顔をしている。強引過ぎたかな?

『何かごめんね?』

「あ、いえ!大丈夫ですっ」

『うーん……。あ、そうだ!友ちゃんも誘ってこよう!』

「えっ」

決めた事はすぐ行動するのが私!!確か友ちゃんは矢島とか言う人とペアだった気がする!別れ際「あたしのコテージはこっちだから」と友ちゃんが言っていたのを思い出す。曖昧な記憶をたどり、友ちゃん達のコテージを探すがなかなか見当たらない。というか、ここは何処ですか!!!気が付いたら森みたいな所にいた私達。どこをどう行ったらこんな所に着くんだろ

ゆいさんは天才なのかもしれない!!!

不安そうに私に腕を絡める春ちゃん。あちゃあ…春ちゃんには悪いことしちゃったなぁ…。私一人ならまだしも…。

取り敢えずポケットから携帯を取り出す。……が圏外だと言う悲しい結末。…どうしよう…。人の気配もしないしな。あ、でも獣の気配はする!!!!

ん?獣?

「ゆ、ゆゆゆっゆいちゃん…!!!」

『あ…』

がさがさと草が掠れる音が聞こえたと同時にグルルルとこちらを警戒するトラが現れた。…どうするゆい!



1,戦う

2,愛でる

3,逃げる

4,話しかける

5,お茶に誘う



勿論2でしょ!!!私、ネコ大好きなんだよね…っ

気を逆立てないようにジリジリとゆっくり近づく。

「ゆ、ゆいちゃん!?」

『しーっ』

トラ吉は攻撃する気配はない。(名前は今決めたよ☆)

「グルルル…」

『怖くないよ〜、おいでー』

両手を広げる。するとトラ吉は恐る恐る私に近づいてきた。可愛いな〜。あと少し、あと少しと言うときに春ちゃんが恐怖のあまりか、ガサッと大きな音をたててしまった。びくりとしたトラ吉は爪を立て、私に襲いかかってくる。

『っ!!!!』

「ゆいちゃん!!!」

反射的になんとか体を避けたものの、しゅっと爪が頬に触れ、一瞬激痛が襲う。

『いた…』

「すいませんっ私…っ!!」

ズキズキと痛む頬を押さえればぬるっと血が手につく。

こりゃ、結構深いかもなー

『ゆいは大丈夫だよ春ちゃん!!だからそんなに泣きそうな顔しないで!』

「でも…」

『…………』

人差し指を口元に当て言葉を制止する。うろたえる春ちゃんに背を向け、トラ吉と向き合う。先程より警戒心が高まってしまったトラ吉に次は遠慮なく近づき…………、抱き締める。

「グルルル…ッ」

『大丈夫だよ、トラ吉。私達は悪い人じゃいから安心して』

そう言い聞かせて毛並みにそって体を撫でる。何度も何度も大丈夫だよと呟けばトラ吉は大人しくなった。――落ち着いてきたかな?

『ん、いい子いい子』

よしよしと頭を撫でれば少し嬉しそうに喉を鳴らすトラ吉。

「すごいです…」

『そうかな?私、ネコが大好きでさ〜!可愛いよね〜』

「ネ、コ…?あ、ゆいちゃん傷を見せて下さい!!」

『え?うん、ほい』

「すごい血…っ!!結構深いじゃないですか!!早く手当てしなきゃ!でも…今…うぅ…」

気付けば私の服は血で真っ赤に。なんて大袈裟な傷だ!!!

『春ちゃんテンパり過ぎだよー?それにこんな傷、舐めときゃ治る!』

「ゆいちゃんはアイドルなんですよ!?あとが残ったりしたら私…っ」

『ありゃー…』

ぱっちりとした瞳から涙が溢れる。どうしたらいいのか分からず、トラ吉から離れ春ちゃんを抱き締めながら頭をポンポンする事に。

「ごめんなさい…っ」

『んー大丈夫大丈夫!』





しばらくこうしていた時。

「七海!!ゆい!!」

「『っ!』」

聞いた事ある声が森に響いている。トラ吉をそっと逃がし声の元へ足を進める。徐々に近くなる声の主。数分進んだ時、人影が見えた。

あのシルエットは…

『真斗くんっ!!!』

「っ!?」

『やっぱり!』

「な…っ!!七海泣いていたのか!?それにお前も血まみれじゃないかっ」

私達を見た瞬間表情が険しくなる真斗くん。ポケットからハンカチを取り出し私の頬に当てる。少しズキッとしたが、それを言ったらもっと心配されるので我慢。

『これくらい大丈夫!余裕のよっちゃんですよ!!』

「……」

「?」

数秒私を見つめたと思ったら急にだっこされた。しかもお姫様だっことゆうヤツ。

『!?!?』

「…っあ、暴れるな…!」

『いやいや!ゆいさん自分で歩けるよ!?足怪我したわけじゃあるまいし…!!』

「黙って俺に従え」

「そうですよゆいちゃん!無理しちゃダメです!!」

『……いやいや……』

本当に大丈夫なんだがなぁ…。まあ、いいや。歩かなくて済むしっ

真斗くんは私を担ぎながら携帯を取り出す。そして、多分音也くん達であろう人に連絡を入れていた。「七海達を見つけた。ああ、今から向かう」って。

もしかしてみんな、私達を探してたのかな?それはないか!!!HAHAHAHA☆











『……………』

「……………」

「ゆい、怪我したんだって!?大丈夫!?まだ痛む!?」

「ゆいちゃん、怪我がすごいです…!!大丈夫ですかっ!?僕がおまじないをかけてあげます!」

「落ち着け二人共、ゆいが困っている。怪我は俺が治療する。触るな」



『…………』

「…………」

「はぁ…あなた方はトラブルメーカーですか…。私達がどれ程探したかと…。聖川さん、私も手伝いますよ」

「子猫ちゃん。俺が傷にキスをして治してあげるよ」

「レンやめろ!!…っと、七海は怪我はないか?それとお前!なんでそんな怪我したんだよ」



『………………』

「………………」

「ゆいちゃん!!どれだけ私が心配したかと…!!こんな傷までつくって…!」

「一体何があったんだよ。返答によっては相手の命はねぇぞ」

「Oh…っ!人気アイドルが顔に傷…!!リューヤさん、早く救急箱を持ってきて下サーイ」

「俺がかよ!」



『………………』

「………………」

帰ってくるや否、私達に近づき騒ぎ出すみんな。そんな光景に、私は真斗くんの腕から動けずにいた。数分固まっていたら「ゆい…?」と、心配そうに言う真斗くんの声にハッとする。

「大丈夫か?」

『あ、うん大丈夫!!!…ってさっきから言ってるんだけどな』

「むむぅ…。」

『…?どうしたの林檎ちゃん』

「いつから、まあくんもゆいちゃんを呼び捨てするようになったのかしらぁ?音くんや翔ちゃんなら分かるけどー…」

林檎ちゃん、細かいとこ気にするね〜

まあ、確かに今思えば…

「っ!!す、すいません…!!」

『いや、いいのだよ真斗くん!呼び捨ての方が嬉しいしっ』

「そ、そうか…」

「おい、救急箱持ってきたぜ。聖川、ソイツを離せ」

「しかし…」

「俺がやる」

「…………」

渋々と私を近くの椅子に座らせる。渋々かどうかは知らないけどゆいにはそう見えたのだよ。

「うわぁ…ゆい痛そう…」

「何故あなたが痛そうな顔をするんです」

「だって…」

「おやおや聖川、随分不機嫌だねぇ。そんなに彼女を離したくなかったのかい?」

「だ、誰がそんな事…っ!!自己解釈されては迷惑だ…!」

「…ふっ」



『あでっ』

龍也が容赦なく傷口に消毒液をつけた綿を押し付ける。消毒液が染みていたいです、はい。

「あんまり動くな。てゆうか、すっげぇ血の量だな。服真っ赤じゃねぇか」

『いいよ、どうせ後で水着に着替えるし』

「お前、まさか海に入る気か!?」

『翔ちゃん、すぐお前ってゆーね…。』

「あ…わりぃ…」

『もういいけどっ。それと海に入るよ勿論!!』

「怪我してるのにか?」

『これくらい大丈夫!』

今日は大丈夫って何回いったんだろ。みんな過保護すぎるんだよきっと!!

『いいでしょ龍也!』

「勝手にしろ…」

半ば呆れたように呟く龍也。ペタリとガーゼを貼り完了だ、と言って立たせてくれた。

「ゆいちゃん、その傷はなにで出来たんですか?見る限り…引っ掻き傷…ですかね…」

『うんとね…………………………。面倒くさいから春ちゃんが説明してー』

「あ、はい……。私達は友ちゃんのコテージを探してたんですが気付いたら森の中にいて…。そしたらトラが現れたんです」

「えぇ!!!トラ!?」

「マジかよ…」

「それで……私が大きな音を立てたせいで…ビックリしたトラがゆいちゃんに…私のせいで…」

『わわ、そんなに落ち込まないでってば!!』

「そうだ、七海が悪い訳ではあるまい。しかし、よく頬だけで済んだな。少々傷が深いが」

「本当だよ。子猫ちゃんとレディが無事で良かった」

『私は無敵だからなっ』

「そういや、ゆいって自分の事名前で呼んだり私って言ってるけどどっちが本当の一人称なの?」

『唐突だね音也くん。私は私だしゆいさんはゆいさんだよ』

「?」

「わかんねぇよ」

『分かんなくて結構だよーだっ!さ、春ちゃん!!次こそは海行こう!みんなも遊ぼうぜ!!!ビーチバレーとかしよう!』

「お、いいなソレ!」

『でしょでしょー!!じゃあみんな着替えたらここに!みんな強制だからね!林檎ちゃんと龍也、社長もねっ!』

「ふふ、オッケー」

「はいはい…」

「Meも誘ってくれるなんてセンキューベリーベリーマッチョなのネッ!!」

『よし、じゃあ春ちゃん着替えに行こう♪』

「は、はい…っ」









.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ