蒼色音色
□第一章
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私、神園ゆいは、昔から音楽が大好きで毎日小さいながらも音楽関連の雑誌をみたり楽器に触れてみたり歌ったりしていた。それを見かねたお母さんは、私に専属の先生をつけさせ、私はその先生にありとあらゆる楽器の演奏の仕方を叩き込まれた。もちろん様々な楽器と触れ合えて楽しかったし嬉しかったものだ。
そして当時14歳。
得意楽器もでき、ある日私は一人で路上ライブを開いた。曲も歌も自分で作ったもの。最初は足を止めて聞いてくれる人は少なかった。それでも毎日のように同じ場所で路上ライブ開いた結果、お客さんも徐々に増え、最終的にはファンも出来た。お金をとる事はしない。ただ私の音楽を聞いて欲しかったからだ。ついたあだ名は『蒼色音姫』。
蒼色はきっと、私の髪と瞳の色の…青がかかったような水色から来たのだろう。
あの日もいつものように歌を歌っていた。その時、2mはあるであろう大男が近づいてきた。そして彼は私に言ったのだ。
―――Miss.カミゾノ、是非Meの事務所に入って下サーイ。
突然のスカウト。これが早乙女社長との出会い。
大好きな音楽をみんなに聞いてもらえる…。それが嬉しくて私は即オーケーを出したのだった。
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「どうした?ゆい」
しんみりと思い出に浸っていたら、龍也さんに話し掛けられた。場所は楽屋。今日は音楽番組の収録があるからだ。あれから約1年半。私も徐々に人気になり、今では売れっ子として忙しい毎日。自分で言うのも何だけどさ。
『あ、龍也さん』
「なんだよ『さん』って。呼び捨てでいいっつったろ」
『おい龍也。野球しようぜ!!!!』
「…」
龍也さ…、龍也は私の頭をコツンと叩き、はぁと溜め息を一つ。
『――だったんだよ!!すごいよね!』
「ほぉ」
『…ん?』
暫し、龍也と会話していたら楽屋の扉がガチャリと開く音がした。顔を出したのは女装売れっ子アイドル林檎ちゃん。今日も女顔負けの可愛さだなぁ…。
『林檎ちゃん、どうしたの?今回の収録は龍也と私だけだよ?』
「うふ、ちょっと龍也に用事でねっ」
「なんだ?」
「あ、学園の事なんだけどー。またシャイニーがぁ…」
「またかよ…」
『…?』
学園?学園ってなんだろ。そもそも社長と龍也になんの関係が?いくつものクエスチョンマークを浮かべ首を傾げる私に気付いた龍也は説明してくれた。
かの有名な早乙女学園は社長がつくった事。龍也と林檎ちゃんはそこの先生もやっている事。そこに期待の生徒が7名も入学する事。その他もろもろ。
『へぇーふぅーんほぉー…』
「ゆいちゃん?」
「どうした?」
『ねぇ…、その学園にさぁー…』
――私も行きたい。
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『うわぁ、おっきぃい』
あれから数ヵ月。
二人に通わせてもらうよう頼んだ結果、社長からも許可が下ったようで無事入学出来る事に!!うきうきとスキップをしながら門をくぐる。今日は待ちに待った入学式。
『あ、どうせだし龍也と林檎ちゃんに顔だそうかな』
そう決めた私は職員室に向かう。
途中、迷いかけたものの無事到着したよ!!
『龍也ー、林檎ちゃーん』
「おう、ゆいじゃねえか」
「あらん、やっぱり制服似合ってるわね〜」
『ありがと〜』
お礼の意味も込めてぎゅっと抱き付き、ふと思った事を口にする。
『私って何クラスなの?』
すると二人はあっとした後しまったと言いたげな表情をしだした。一体どうしたというんだ。
「…あなたをクラス分けするの忘れてたわ…。」
『え!?』
じゃあ、私通えないの!?そんな考えが頭を過りぶんぶんと頭を揺らし消し去る。しょんぼりと龍也を見上げれば「今決めるから安心しろ」と頼もしい一言。取り敢えず良かった。
「まぁ、もちろん俺のクラスだよな」
「何いってるのよっ!私のクラスに決まってるでしょっ」
「あぁ?売れっ子アイドルをAクラスに入れれるわけねぇだろ」
「むむむぅうぅ…っ」
ぎゃあぎゃあ言い合う二人。結局ジャンケンで決める事になり、結果林檎ちゃんの勝利。
「………不満だが、お前は今日からAクラスだ」
『うん!』
「いいか?もし、お前を悪く言うヤツ、近づく男らが居たら俺に言え。」
『うん?なんで?』
「ソイツらを消すからよ」
『おうふ…。』
「龍也。私も力を貸すわ」
『林檎ちゃんまでかいっ!!……あ、そろそろ行くねー』
「おう」
「行ってらっしゃい」
不機嫌な龍也、ご機嫌な林檎ちゃん。対象的な二人に別れを告げ急ぎ足で入学式会場へと向かった。
そして今は入学式。先生の話を聞いているわけですが……果てしなく眠い。アイツ何言ってるか分かんないし。瞼はだんだん重くなり首に力が抜け、最終的にはこっくりこっくりと夢の中。ああ〜…ア●パンマンが爽やかな笑顔で手振ってるー…。あははぁ振り返してみよぉ〜。おお!次はロールパン●ちゃんが出てきた!!どうしよ、お腹空いてきた…。この二人食べちゃおう!
『………ふふ…』
「あのー…」
『…邪魔しらいれ…私は食べるのぉ……いたらきまーす…』
「えと…」
「おーいっ。どうしたの?春歌。早く教室行かないとー」
「あ、友ちゃん。えっと…お隣の方が起きなくて…。」
「へ?」
うわぁ、バイキ●マンが来たよー。アイツは美味しくなさそうだな…。でも食べてみようかな?いただきまーす。
『……んぐ…まずい…』
「春歌もお人好しだねー。ほっとけばいいのにー」
「で、でも…」
「まあ、私に任せて。」
「え…」
「こうゆうのはねー…」
『ふへへへ…』
「あああ!!!あんな所にステーキがぁあぁ!」
ステーキだと!?
『え!?どこ!?』
「おはよう!…ってあんた…」
『おはよー。…って誰…』
ステーキと言われ目を開けば二人の女性の顔。キョトンと見上げれば林檎ちゃんのようにふわふわな髪の女の子が私の肩をがっしり捕み、じぃと見つめられる。照れるなぁまったく。
「神園ゆい!?」
『うん…?』
何で彼女、私の名前を知ってるんだろ…。
『さては、私を狙うスパイだな!?』
「は…?」
『何故私の名前を知っている!?』
「いやいや…逆に知らない人なんていないでしょ」
『む?』
わけが分からずクエスチョンマークを浮かべる。そして大人しめの可愛い女の子がゆっくりと口を開いた。
「蒼色音姫…。アイドルの神園ゆいさん…ですよね…?」
その一言で自分がアイドルだと言うことを思い出した。パンナコッタ!じゃなくてなんてこった!!!
『あ、うんっ』
「なんでここに…って詳しくは後で聞かせて!!!取り敢えず教室行かなきゃ!」
ぐいっと腕を引かれ、渋々教室へ――。
「勢いで連れて来ちゃったけど、あなたAクラス…?」
『そうッス』
教室へ入るや否、心配そうな表情を浮かべる。
「一緒ですね!あ、私は七海春歌です」
「あたしは渋谷友千香!」
ふわふわ髪の美人さんは友千香。ショートの可愛らしい子は春歌。……あだ名は…
『春ちゃんと、友ちゃん!!…うん、いいね!私はゆいって呼んでー』
目を見開く二人。だけどそれは一瞬で、「よろしく」と手を差し出して笑顔でお互い握手をした。二人とは仲良くなれそうっ。そんな事を考えてる私は後ろから近づく人物に気付いていなかった。そういや、春ちゃんの事林檎ちゃん達が話してたような…。
「…!!…キュートですぅうぅ!!」
『おわぁっ』
少し二人と雑談をしていたら急に誰かに後ろから抱き締められた。いきなりの出来事で正直びっくりしたしチキン肌がたった。振り向いて相手を確認すれば、そこにはミルクティー色のふわふわした青年。そして真っ赤な髪の男の子と青い髪の人がいた。
私はこの人達を知っている。春ちゃん同様龍也と林檎ちゃんからしつこい程聞かされていたからね。この三人はすぐ分かったぜぇ…。
「あ、いきなりすみません。あまりにも可愛かったもので」
「ごめんねー?」
「急に申し訳ないな。四ノ宮も悪気があるわけではないのだ。許してやってくれ」
『あぁ大丈夫だよー』
「あれ…よく見たら、あなた…」
「神園ゆい!?」
真っ赤な髪の…もとい一十木音也くんは急に大きな声をあげ、まじまじと私を見る。それに続いて聖川真斗くん、四ノ宮那月くんが私をガン見。やっぱり照れるなあ。ていうか、みんな私を知ってるのか。
『音也くん、那月くん、真斗くん、そんなに見つめられると…。』
「え…?あぁっごめん!!!…ってあれ?なんで名前…」
おっとぉおぉ!!!私のお口さんのばかっ!!何言ってるんだ!てへぺろ!どうしよう、怪しまれたかな…?
『なんでって、さっき自己紹介で名前言ってたじゃん!!』
「ゆいちゃん、自己紹介なんてまだしてませんよ…?」
『おっとーwwwwゆいさんやっちまったかー?www』
「…草がたくさん生えているな。」
……ん?あれ、真斗くん…?何?クールな顔しといてそんなお茶目な事言うのか!?可愛いじゃないか!!
ていうか、もう言ってもいいかな隠すような事ではないし…。
『えとですね、皆さんの事は先輩の林檎ちゃん、龍也さんから聞いてたんです。はい』
「え…それではゆいちゃんは僕達の事を知ってたんですか?」
『うぬ』
「…そうか。しかし、何故デビューもして売れっ子のおま…あなたがここにいるんだ?」
「あっそうだった!ゆい、そこの所詳しく教えて!」
今まで聞いているだけだった友ちゃんが身を乗り出す。
『詳しくっていわれても…』
「おはやっぷー!あら、ゆいちゃん。もうみんなと仲良くなったのー?」
『うん!そんな感じ!』
説明に困り、もごっていた時タイミングよく林檎ちゃんが教室に入ってきた。回りを見ればみんな既に着席済み。扉の前に立っていた私達は注目の的。
「それは良かったわぁ〜。」
あれ?林檎ちゃん、笑顔なんだけど目が笑ってないように見えるのは私だけ?
『…?』
「はいはいーみんな、席に着きなさい〜」
林檎ちゃんの一言でみんな、渋々と席につく。私も疑問を残しながらも後に続いて席につく。
「今日はみんな入学おめでとうっ!!―――」
結局この時間は林檎ちゃんの話等で終わった。その後は自習だったり学園案内だったり。そして今は、お昼!!!授業も午前で終わり、私はそそくさと身支度をし、寮に帰る事にした。
「ゆいちゃん」
『?』
話しかけられたようだ!声をかけた人物を確認すれば相手は春ちゃんだった。
『どうしたの?春ちゃん』
「えと…、良かったらお昼、ご一緒しませんか…?」
『お昼…?』
そういえばまだ食べてないや。寮に帰っても何もないと思うし。うん、好意に甘えさせて貰おうじゃないか
『じゃあ、一緒していいかな?』
「もちろんです!!」
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学食キター!!!!!広い!学食のくせに広いぞ!!!!一人できゃっきゃしていると「神園ゆい…さん…?」と小さい声が聞こえた。空耳かな?そう思いつつも振り返る。そこには見たことのない黒髪少年。うん?と返事をすれば「やっぱり神園ゆいさんなんですね!」と手を握られブンブンされた。
『…どちら様…?』
「あ、僕は山田太郎です…!!」
『太郎くん?よろしく〜』
よく分からないが取り敢えずブンブンしかえした。すると、彼は顔をほんのり赤らめあたふたし始めた。
『大丈夫?次郎くん』
「太郎です…。だ、大丈夫です…っ!!」
『あ、三郎くん、何か用だった?』
「太郎です…。あ、いえ…用って程では…。」
『……?そう、じゃあ私用事があるから!またねー四郎くん!』
「…太郎です…」
五郎くんに手を振り、その場をあとに………しようとしたが、春ちゃんがいない事に気付く。どこに行ったんだ!!多分六五郎くんが話しかけ、私が立ち止まったのでそれに気付かず春ちゃんが先に行ってしまったのだろう。
キョロキョロおどおどと、明らかに不審者のような行動をしている私。
「何、不審な行動とってんだよ」
『…っ!?…龍也か…』
「おう。で、どうしたんだ?」
『あ、いやぁちょっと…春ちゃんと離れてしまいましてねぇ…』
「…七海か?七海ならあっちで見掛けたぞ。そういや他にも人がいたな」
『本当っ!?ありがとう!!じゃあ、私行くね!』
龍也から春ちゃんの居場所を聞き、そこへ向かおうと足を進めたら急に腕を捕まれた。不思議に思い何?と聞いたら「さっきのヤツは何だ?」と言われた。さっきのヤツ…?
ふっと、五十郎くんの顔が浮かぶ。
『山田四十郎くんのこと?何か分かんないけど話しかけられて手ブンブンしたから手ブンブンしかえただけだよ?』
私が話終わると、龍也は何故か溜め息をついた。
「今度から誰かに握手求められたら断れ…。いいな?」
『…はい。』
そんな元ヤンな視線で言われたらはいって言うしかないじゃないか…!!ていうか、桃太郎くんのブンブン…。アレ、握手だったんだ…。
「分かったならいい。」
ポンと手を私の頭に置く。
「よし、一緒に七海んとこ行くぞ。」