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早乙女学園声優コース:前編












「お願いです…お願いです!どうしても受験したいんです!!」

「ダメだ。規定の時間を過ぎての受付は一切認められない」

「お願いします!私…私、どうしても受けたいんです!この早乙女学園で音楽の勉強がしたいんです!」



雪が降り積もる中、ここ早乙女学園の門にて一人の少女が警備員の服を掴み必死に声をあげていた。しかし相手は「しつこいぞ君」と苛立ちを含んだ声音でいい放ち、彼女を突き飛ばした。





「諦めて帰りたまえ」

「あ…待って…待って下さい!!」





そんなやり取りを見ていた私は何となく傘を開き彼女に近づく。



が、私より少し早く赤髪の男が少女に近づき、「大丈夫?風邪ひいちゃ大変だからね」そう言いながら手を差し出す。自分がしようとしていた事を先越されてしまったようだ。だが近づいてしまった以上スルーは出来ない為、とりあえず少女に大丈夫かと訪ねてみる。



「だ、大丈夫です…」

『そっか、よかった。』



「なんだ君たちは」

「受験生だよ。ねえ、こんなに頼んでるんだから受けさせてあげてよ。遅れたって言っても試験まであと30分もあるんだからさぁ」

「ダメだ、遅刻は遅刻。時間を守れない時点でこの早乙女学園の生徒に相応しくない!」



(手厳しいな…。さすが早乙女学園ってとこかな…?)



なんて思いつつ、静かに警備員に睨みをきかせる。



「理由によるんじゃない?」



ふと後ろから声が聞こえ、何事かと思い振り向けば高級車からオレンジ色の髪をした男が出てきた。

彼によると、彼女が遅れたのは迷子の子供を助けていたかららしい。



「雪の中、迷子の子供を捨て置くような生徒がいたとしたら、それこそこの学園に相応しくないんじゃないかなあ」

『ごもっとも』

「だよねぇ!受けさせてあげようよ!!」

「お願いします!」

「ダメだダメだ。そんな事は認められない」



ピピピピピピと一人の警備員の携帯が鳴る。

「…ああ、はい。分かりました。

……いいらしい。通っていいぞ」

「え?え?それじゃあ…」

「特例として受験を認める。」

「はぁ…!ありがとうございます!!!」

「やったじゃん!」



少女は喜び赤髪の少年、オレンジ髪のお兄さん(?)、私の順にお礼を述べた。何もしてないんだけどね。まあ、好意は受け取っておこう



『良かったね!ここまでしてもらったんだから受験合格しなきゃ。4月の入学式で待ってるから!』

「はい!」



そんな言葉だけを残し、学園内に姿を消す。



「あ、君もここの受験せ…い?ってあれ?」

「先程の女性なら中に入って行きましたよ」

「あちゃあ…」

「まあ、試験頑張れよ子羊ちゃん。俺とも4月に会おうな」

「お互い頑張ろうぜ!」

「はい!!」

「さっきのレディとも会えると信じてるよ」

「きっと会えます!」







―――――







(さっきの女の子、かわいかったなぁ…。きっとアイドルコースなんだろうな…)

学園の中へ入り、地図を頼りに目的の場所を目指す。そして数分くらい歩いた先に【声優コース】の標識が現れ、その中に入ってみると約10人くらいの人達が雑談をしていた。そしてどれも男。中の一人が私に気付き、話しかけてくれた。









「君も声優コースかい?」

『あ、はい』

「そうかぁ、どうやら声優コースでは君だけが女性のようだね」

『え!?そうなんですか!?』

「ああ。君が来てくれたからこれで全員揃ったようだ」

『これで全員…』



衝撃の事実に目眩がした。幻コースの噂は聞いていたが、やっと再び出来た声優コースの生徒が10人くらいしかいないとは…。



「まあ、取り敢えず受験の邪魔にならないように学園内を見て回ろうか」



そう、推薦入学で入れる声優コースが今日早乙女学園に足を運んだのは学園長の言伝で早く学園に馴染めるように学園見学をするためだ。

案の定、思っていたより早乙女学園は広くて一日じゃ見回れないほどだ。最初見た時驚きを隠せなかったくらい。





「そういえば、君ってAクラスになったんだって?声優コースの人達は普通みんなSクラスになるはずなんだけど…」

『ああ、そうなんですが、Sだとトップのクラスにいることに甘えてしまい本領発揮出来そうにないなと…。Aだったら上を抜こうと思う気持ちが出てきて頑張れそうだなって…。なので、あえてAにしました』

「なるほどね…。君はすごいよ。俺も頑張らなくっちゃな」

『ははは…』



乾いた笑いを溢す。









――――





4月。



早乙女学園の入学式も無事(?)終わり今日から正式に早乙女学園の生徒に。学園長の登場、退場共に目を疑うほど派手だったが、私は嫌いじゃない。あ、衣装も派手だったなぁ、あれはないわ。

まあ、そんな事より受験時にあった少女は合格したのかと気になって探してみたがあまりの人の多さに探し出すことは出来なかった。いや、人の多さ以前に自分の身長が足りないが故に探しきれなかったと言った方がいいだろう。認めたくはないが。…認めてないよ!











―ガラッ



教室のドアを開けた瞬間一気に視線がこちらに注がれる。普通ならそれで終わり視線は逸らされるはずだが、何故だかみんな、私をガン見してくるではないか。入学早々、いじめフラグ立っているのか?私やばいじゃん

とにかく、あまり目立たないようにそそくさと教室に入り適当に空いている席に腰を降ろした。





「ああ!やっぱりそうだ!」



ぼーっとしていると聞いたことのある声が教室に響く。

反射的に横を向くとあの時の赤髪くんと少女の姿が。そしてもう一人ナイスバディな女の子がいた。





「やったね!同じクラス!!」

「受験の時はありがとうございました」

「んおぉ?ふっふ〜ん、こいつがあんたを助けてくれた恩人A?」

「エ、エーって…」

「あ、俺一十木音也。改めてよろしく」

「あたし、渋谷友千香。よろしく」

「七海春歌です。」



どうやら、私には気付いてないようだ。悲しいような…。どうせなら話に入り込みたいくらいだけど、忘れられてたら悲しいからやめておく。





「エーリーザーベスー!!!」

「えぇ!?」







いきなり横をものすごい早さで黄色い髪の人が走り抜ける。つい大声で驚いてしまった。私の声でかその人の声でか分からないが音也くん(だよね?)が振り向く。そして迫り来る人物に他の二人も気付いたようだ





「えぇ?」





黄色さんは驚く春歌ちゃんに目掛けて飛び込む。





が、反対側から青い髪の人が春歌ちゃんの腕を引き、音也くんを押し出た。そのまま黄色さんは音也くんにダイブ…。



「ぎゅうぅ」



「うわぁあ!はーなーせー!!」

「あれ?」

「うわぁあぁ、あっ!」



黄色さんが急に腕を離したため、音也くんは地面に倒れてしまった。

――…なんか、教室にいるみんなが彼らを見てるんだけど…。気付いてるかな…?





「…危ない所だった。」

「あ、ありがとうございました…っ」

「礼には及ばない」



一方、助けられた春歌ちゃんは顔を赤く染めてあわふてている。青さん、ちゃっかりしてますな…。



「い、いきなりなりするの!危ないじゃないよぅ!」

「ああ、すみません。彼女があまりにもエリザベスに似ているので」



彼が言うには、春歌ちゃんが実家に飼っている犬に似ているんだとか。



「あ、僕は四ノ宮那月。ちっちゃくて可愛いものが大好き何です。」

「………俺は聖川真斗。」



ふむふむ、黄色さんが那月くんで青さんが真斗くんか。これからお世話になるかもだし覚えておこう。なんて考えてたら、ふと後ろを振り向いた音也くんとばっちり目があってしまった。





「ああ!!あの時の!」

『こ、こんにちわ…』





続いて春歌ちゃんが声をあげる。



「はぁ…っ!受験の時はありがとうございました!!あ、あの…また会えて嬉しいです…」



完全に教室中の視線が再び私の方に。



「あ、もしかして彼女が恩人B?…いやぁ…、ほんっと想像してた以上に可愛いわ…」

『あ、ありがとう…?渋谷さん』

「渋谷さん?友ちゃんでいいよ!…って、さっき春歌にも言った気が…。」

『桜咲舞です。遅くなったけど音也くん、那月くん、真斗くん、春歌ちゃん、友ちゃん、よろしくね!!』

「あ…名前…!」

『さっきの会話、みんなに丸聞こえだったからさ』



それ以前にすっごい見てたんだけどね、みんなの事。



「そうだ、那月だからなっちゃんってのはどう?」

「なっちゃん…。んふふ、なっちゃんなんて可愛いですね気に入りました」

「ふふ…あはは」





なんだか、今の光景が微笑ましくて友ちゃん始めに自然と笑みが溢れ、女子三人で笑いあった。



「真斗はマサでいいよね」

「勝手にしろ。」

「真斗くん超超可愛いです!!」











(騒々しいわね)

(まったく)

(チャラチャラしちゃって)

(感じ悪)





今の私たちには回りの声なんて聞こえるはずがなかった。春歌ちゃん達に気付いてもらえた嬉しさで舞い上がっていたのかもしれない。







―――――――――







後編に続く!
果たしてこんなのでいいのか・・・。







2012/10/15

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