長編

□見上げた空 8章
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ふらふらふーらふら

そう、ふらふらと僕は行き先も解らぬまま歩く


長く伸びた髪の毛が開けた着物の胸にベッタリと張り付く

誰からかが僕を見てニヤニヤとする。


…早く…帰りたい

熱があって頭痛が酷い。

川にたたき付けられた身体は悲鳴をあげている。


その前に…ここは何処だろう?



そう思った次の瞬間…

「グ…ア!」


腹に凄い痛みを感じ、思わずしゃがみ込む

「なに…グハッ!」

今度こそは完全に意識を手放す。













「ん」

「お、起きたか」


聞いたこともない声、

「誰…?」


「そんなこたぁどうでもいいんだよ」

別の声も聞こえ、思わず目を開ける


すると、目の前には数人の男



…怖い



…怖い怖い怖い



蘇る記憶…犯され、殴られた。



「ははっ…こりゃあ上玉だぁ」

「そんじょそこらの芸者とは比べもんになんねえや」


身体のあちこちを触られる

「あ…ゃ…」

「もうすぐ気持ち良くなるさ」


「助…け、て」

「誰も助けにこねえよ」


ドクン…

いつか聞いたことのある言葉、


その瞬間、僕は壊れてしまったんだ



「やぁぁぁぁぁーーー!!」

「黙れ!外に聞こえるだろっ」


「あ…ぅ、ぁ…助けて、助けてぇ」



グシャァアァ!

「っは」


ビチャッという生々しい音と血の臭い


誰の血?あの男達の血?僕の血?




「やっと見つけたぞ、総司」

「…千…景?」


「あぁ」

と同時に包まれる己の身体

千景の匂い


「全く、お前はいつも俺を心配させる」

「…ごめんなさい」


「土方にあったんだろ?」

「ッ……うん」


「あんな男、忘れるんだ。いまやお前は俺の妻。…あの男がいると…俺達は狂ってしまう」

「…」

「総司、答えをくれ」

「……うん」


千景は優しく微笑み、僕をより強く抱きしめた


「千景、袴が汚くなっちゃう」

「構うものか」



優しい千景の体温に、興奮してた身体が安らぐ


「寝てもよいのだぞ」

「ありがとう…」





『暖かい…』


(けれど、あの人とは違う体温)

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