長編

□見上げた空 7章
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「…ん」


目を開ければ良く見知った天井が目に入る


痛む身体を起こたら、おでこから落ちる生暖かくなった手ぬぐい、それと同時に感じる頭の激痛

「っ…い、た」


あぁ…この感じはよく分かる。熱だ

しかし自分は何故熱になったかと頭を少し働かせると、平助と再会したこと、川に落ちたことを思い出しはっとなる。


…逃げなきゃ

ズキズキと痛む身体を動かし、刀を持って出ようとするが…


「なにをしている」

との声と同時に突き飛ばされる

「うぁ…!」

身体に激痛が響きながらも
瞼をそっと開けると、

冷酷な冷たさを持ち合わせている瞳と目が合う


はじめ…くん


「…逃がしてよ」

「無理だ」

「なん…で?」


「あんたは新撰組を裏切ったからだ」

「裏切った?確かに…僕は裏切ったけど



最初に裏切ったのは君達じゃないか」


クスリと笑えば、はじめくんは傷付いた表情をした


「しかし何はともあれ、あんたは今や薩摩藩の者…新撰組の敵だ」

その言葉がズキリと心臓に突き刺さる。


「…そうですね、斎藤さん。私は薩摩の者ですから」
「ッ…総司」
はじめくんが動揺している

その瞬間、僕は目にも止まらぬ速さで峰打ちをかます。


「ぐ…ぁ」


そしてはじめくんが倒れ込んだ時に部屋を出れば、遠くから歩いてくる土方さんに、見付かった


「ぁ…」

「総、司」


「ッ」

ギシギシと痛む身体で思い切り走り出すと、向こうから微かに聞こえてくる声、



“戻って来い”

走りながら
瞳からは汗が出てきた





『本当は、大好きで堪らない。』


(もう後戻りは出来ない)




続く…

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