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□寵愛。
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乾燥した風が吹き抜ける。
それで舞った髪を耳にかけて、よし、と気合を入れ洗濯物を抱えた。

洗濯を再開しようと冷たい水に手を入れる。
そのとき、ずしりと背中に重みが乗った。そして低く心地よい声で名前が呼ばれる。


「アヤカ」


「わ。ギルガメッシュさま、どうなされたのです?」


「お前を見かけたのでな。」


眩しいほど、綺麗に笑う彼は私の主だ。
そんな笑顔についドキリとしてしまう。


「生憎ですが、私、まだ仕事中でして……」


「お前、少し前もそう言っていなかったか?」


そんなに長くしていたから手も冷たくなってしまっていたのか。
王の御前だが、悴む手には負けてしまいついつい息を吹きかけてしまった。


「ほう、こんなに冷えてしまってるではないか」


「ギルガメッシュさま!汚いです!」


「汚くなどない」


冷え切った手を包み込む暖かい手にほんの少し頬が赤く染まる。


「少しは休憩しろ」


「で、でも、仕事がまだ……」


「まだ日は高いだろう」


「他にも、まだ……」


「お前は!」


声を荒げるギルガメッシュさまにびくりと肩を揺らす。それを見た彼は少し罰の悪そうな顔をして暖かい手を私の頭に乗せた。


「あの……」


「お前は我の側にいればよい」


「それだけでは、拾ってくださったのに、恩返しができません!」


「我の側にいることがお前の仕事だ。」


ぽんぽんとリズム良く弾む手にまた顔を赤くしてギルガメッシュさまの赤い目を見つめた。


「私なんかがあなた様の側にいてもよろしいのでしょうか?」


「アヤカ、お前は自分を謙遜しすぎだ」


「あ、髪がぐちゃぐちゃになってしまいます……!」


乱暴に撫でられた髪を押さえつけて困ったように眉を寄せると目の前の王は笑った。


「やはりお前はそうやって感情豊かの方が良い!」


「え、あ、ありがとうございます?」


「何故疑問系なのだ。素直に喜べ」


「ありがとうございます!」


頬を緩めて再びお礼をいうとギルガメッシュさまはその髪に勝るぐらいの眩しく私の大好きな笑顔で頷いたのだ。


寵愛。


(ギルガメッシュさま、もう少し頭を撫でてもらってもよろしいでしょう……か……!?)
(最後まで言わずともしてやろう。そんなに我の手が気に入ったか?)
(あなた様の手はとても、暖かいのです)
(そうか、ならいくらでも触れてやろう)


アンケートから、「大人しめのヒロイン甘夢」でした。
 

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