*我愛羅長編番外


―――――――――

今日公園に来てみたら、いつもと違う光景が見えた。女の子が二人、向かい合って何か話してる。
(…あれ、あの子…)

一度だけ、見たことがある。

誰もいない公園で、一人でブランコに座っていた女の子。

黒く澄んだ瞳と髪が印象的な、綺麗な子。

突然、こっちに何かが飛んできた。

(首飾り…?)

虹色にキラキラと光るそれは、ブランコに座っていた彼女が大事そうに見ていたもの。

ふと、彼女の方を見る。

(あ…)

彼女に浴びせられる、砂、石、暴言。

ズキン。

左胸が痛む。

――『バケモノ』『こっち来るな』『にげろー!』――


(僕と…同じ……)

もう何も考えられなくて、思わず体が動いていた。

いつものように向けられる恐怖の目も、今はどうでもいい。

「やめなよ…」

ただ、あの子を守りたくて。

「あ…す、砂の……きゃぁぁぁあ!」

みんなは逃げて、公園には僕と彼女の二人になった。

彼女の方へ歩み寄る。

「大丈夫…?」

「……」

俯いたままの彼女がこくん、と頷く。

(……)

「……」

…また拒絶、されると思った。

けど、目の前の女の子はみんなのように逃げようとはしない。

(…どうして、逃げないの?)

「…君は…僕が怖くないの?」

彼女がやっと顔を上げ、ふるふると首を振った。

(……、)

予想もしなかった反応に、僕は戸惑っていた。

真っすぐ僕を見つめる彼女の瞳は、バケモノを見る目じゃない。

僕を、我愛羅を、見てくれてる…?

「…あ、そうだ。これ…」

彼女に首飾りを渡す。

『……、』

彼女はほっとした顔で大事そうにそれを握りしめて。

「…!」

するとだんだん彼女の目が潤んできて、泣いてしまった。

「ど、どうしたの!?」

彼女は一向に泣き止まない。

「…泣かないで…」

思わず体が動いて、彼女を抱きしめてた。

固まってる彼女を見てはっと我に返り、

「…あ、ご、ごめん」

パッと離れた。

『あの…』

「?」

『…ありがとう、助けてくれて…』

「…!」

"ありがとう"

初めて言われる言葉が、僕の心に染み渡って…

思わず、笑顔がこぼれた。

そうしたら、彼女も笑ったんだ。

それは思わず見とれてしまうくらい綺麗で。

この笑顔をずっと見ていたい。

そう思った…








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