T&B

□夜行性
1ページ/2ページ


勝手に人の家に押し掛けて、勝手に持ってきた焼酎やらビールやらで勝手に宴会。

「たまにゃいいだろ。テイクアウトのデリ一人で食ってるよりはさ」

いりません。



瓶に入ったピクルスの蓋を開けて、ワインと一緒にほれ、と持ち上げる。

自慢げに手渡されたワインの色はロゼ。

いりませんって。
僕にはやることがあります。

「まーてよ、バーナビー!付き合えってー」

焼酎片手に絡む姿は、一番「ああはなりたくない大人」のイメージそのままだ。

何時も仕事から帰ったら、軽食を片手にパソコンを繋ぐ
ヒーロー稼業を真面目にやっているだけでは、ウロボロスの情報は満足に入らない。

途方もないレベルで、何か大きなものが動いている、はずなんだ。

自分に出来ることは、網に引っ掛かってかき消される前の、どんな小さな情報でも拾い、調べること。

一日も、この作業を欠かせたことはなかった。

「バーナビー、おいバーナビー!・・・もう、バニーちゃん!」

まだそんなに酔っていないだろうに、しつこいな。

首に絡まる腕をやや乱暴に払い、盛大にため息をついて向き直る。

「一杯だけですよ、おじさん。」

・・・あれ

「っしゃあ!じゃ、そこ座れバニー」

嬉しそうに自分の前に散らかしたデリーのその向かいを指す。

まいったな。クッションかテーブルの小さいのでも用意しないと。

「何じぶんちみたいに騒いでるんですか。図々しいですよ」

冷たい床に胡座をかいて座った。

あれ。

「いいじゃねえの。ほら、乾杯ー!」

何に乾杯する気か知りませんが。
掲げられたグラスに軽く音を鳴らした。

「お前さ、いつも帰ってから何してんの?」

「調べものです」

そう、本来こんなことをしている場合ではない。

「つまんないねえ。ほんっと、この部屋があり得ねえもん」

「何がです」

「何もねえ。漫画とかCDとか何かと捨てられねえ雑貨とか。マジで何やってんの?」

「そんなことどうでも良いでしょう。調べものと言ったはずです」

「パソコン、そんなに面白い?」

「ええ。日課ですから」

不味いものでも食べたような顔をして、虎鉄は焼酎を口に運ぶ。

「おじさんは、何してるんです?


「俺か?俺はだな!・・・チャーハン作ったり?雑誌見たり、娘に電話したり?」

「大したことしてないじゃないですか。」

あれ。

呆れた溜め息と、疼くような違和感。

「まあ、な」

鳥のフライをつまんで、焼酎を流し込む。
バーナビーもつられてロゼを一口。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ