PRESENT

□気持ちは同じ
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「ヒドイです、涅隊長……」


そう呟いて伊勢七緒は自らの死覇装へ顔を埋めた。


と言っても今の七緒の見た目は黒猫だから、端から見れば捨て猫が黒い布に包まっているようにしか見えないだろう。


こうなったのは今から一刻ほど前だ。


七緒は十二番隊・副隊長の涅ネムに茶に誘われた。


それに応じたのが間違いであった。


彼女は茶に薬を仕込んでいたのだ。


それも、十二番隊隊長兼技術開発局局長の涅マユリの開発したもの。


効力は猫になるだけ(必要性はないだろう)。


ネムの話では見た目、効果時間には個人差があり、一日経てば必ず元に戻るとのことだ。


ただし、夜一の様に完全ではないため、言葉は話せるが、な行はにゃになる。


一度は隊長の京楽春水に事情を話そうと思ったが、猫姿で、な行がにゃなのでは恥ずかしいにもほどがある、と断念した。


そのうちに、雨が降ってくる。


「最悪だわ……」


周りの人に聞こえない声で呟いて、にゃにゃ緒は死覇装にいよいよ包まる。


行き交う人々はにゃにゃ緒を目にも止めない。


が、ただ一人、歩みを止めて、にゃにゃ緒を抱き上げた。


それは京楽だ。


にゃにゃ緒に焦りが生じる。


ばれぬように細心の注意を払っていた。


だが、幸か不幸か、京楽がにゃにゃ緒の包まっている布が七緒の死覇装であることに気づいた。


京楽は黒猫の成りを見て頭を撫でる。


猫だからなのだろうが、それがにゃにゃ緒にはひどく気持ちよかった。


「これ、七緒ちゃんの死覇装だね〜……。
ま、いっか、後で渡せば」


そう言って京楽はにゃにゃ緒を、己の部屋まで連れ帰った。


猫とは言えど、この状況はにゃにゃ緒も不本意である。


京楽に気づかれなかったのは幸いだが、これはこれでやりづらい。


と、京楽が濡れ鼠だったにゃにゃ緒を布で拭く。


布から香る京楽の匂いに、にゃにゃ緒は少し安心した。


にゃにゃ緒を拭き終わった京楽はそっとにゃにゃ緒を抱き上げる。


「君、真っ黒で賢そうで、まるで七緒ちゃんみたいだね〜♪」


その言葉に一瞬ドキッとしたが、京楽が何もなかったかのように頭を撫でるのでにゃにゃ緒は胸を撫で下ろした。


ホッとすると、気持ち良くなってくる。


「んにゃ………」


猫らしく一声鳴いた後、にゃにゃ緒は眠った。


七緒が目を覚まし、目に入ったのは京楽の部屋の天井だ。


慌てて起き上がると京楽のベッドの上にいた。


体は元の姿に戻っている。


傍らに置いてあった死覇装を着て、姿のない京楽を探す。


すると、見計らっていたかの様に京楽が顔を出した。


「おはよ、七緒ちゃん」


「おはようございます、隊長……」


七緒は昨夜のことをどう話そうか迷い、口ごもる。


七緒がモヤモヤしていると、京楽の手が七緒の頭を撫でた。


昨夜と同じ安心感を得る。


と、急に京楽が七緒を抱きしめた。


「んー、やっぱり七緒ちゃんがいいね」


「は?」


思わず七緒は首を傾げる。


「やっぱりにゃにゃ緒ちゃんより、七緒ちゃんの方が触りがいがあるな〜って」


「隊長、セクハラです!……って隊長、気づいていたんですか……?」


京楽は隠さずに頷く。


七緒は思わず真っ赤になって俯く。


「ね、猫だったんですよ!?」


「猫でもなんでも七緒ちゃんは七緒ちゃんでしょ?
ボクはどんな七緒ちゃんも好きだよ♪」


そう言って京楽はニコニコと笑う。


が、七緒は笑えるはずもない。


「もう、隊長のバカ!!」


叫ぶついでに突き飛ばしてやる。


「七緒ちゃんったら釣れないなァ……。
にゃにゃ緒ちゃんは頭を擦り寄せてきて可愛かったのに〜♪」


「言わないで下さい!!」


この後京楽は数日間、七緒に口をきいてもらえなかったとか……。


END

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無駄に長い……。
牧田様、これで大丈夫でしょうか?

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