SHORT

□運命の女神サマは微笑まない
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「七緒チャン♪」


いつもの様に京楽春水は伊勢七緒に触れる。


今日は後ろから抱きしめた。


七緒は大して驚きもせずに懐から扇子を取り出した。


そして、京楽の手をピシャリと叩く。


が、今日の京楽は七緒から離れなかった。


「七緒ちゃん、今の痛かったな〜」


「知りません。自業自得でしょう」


そう言って七緒は身をよじる。


このまま京楽の思うままに拘束されているわけにはいかないのだ。


仕事は山の様にある。


正に、塵も積もれば山となる。


たった一枚の薄い紙が溜まりに溜まり、山の様に積み上げられたのだ。


そして、その原因の男は未だに七緒を抱きしめている。


「ボクの可愛い七緒ちゃん」


そう静かに呟き、京楽は七緒の首元に顔を埋めた。


これにはさすがに七緒も動揺する。


瞳が揺れ、一瞬動きが鈍くなる。


しかし、辛うじて七緒は京楽に抵抗する。


顔を赤く染めたまま扇子で京楽の頭を叩く。


弱く叩いたので痛くはなかっただろうが、京楽は七緒から離れた。


そして、わざと大袈裟にむくれてみせる。


「七緒ちゃんのイジワル」


「隊長が私に触るからいけないんです」


七緒はフイと顔を逸らし、仕事に取り掛かろうとする。


が、まだ京楽は諦めていなかったらしい。


再び七緒の動揺をさそう。


「だって七緒ちゃんの身体が柔らかいんだもん」


京楽の予想は的中し、七緒の頬どころか顔すべてが真っ赤になった。


京楽はニヤニヤと締まりのない笑みを浮かべたまま七緒を見つめる。


七緒は手近にあった書き損じの書類をくしゃくしゃに丸めて、京楽に投げた。


それは見事京楽に当たるが、彼の笑みは崩れない。


「京楽隊長、セクハラです!バカ!!!」


最後の言葉は副隊長としては許され難いことだが、相手が京楽だけに問題はない。


すっかり気分をよくした京楽は、肩を怒らせ仕事をする七緒を見つめながら思った。


ボクの女神サマは今日もツンデレかぁ……。


運命の女神に七緒女神を振り向かせてもらうしかない様だ。


京楽は遠い目でフッと笑った。


『運命の女神サマは微笑まない』


END

ーーーーーーーーーーーー京楽隊長に
「七緒ちゃんの身体が柔らかいんだもん」

七緒ちゃんに
「京楽隊長、セクハラです!」

と言わせたかっただけ(笑)


タイトルはお題配布サイト「Dear.」の鈴木様に頂いたものです。

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