SHORT
□毎日が記念日なんだ
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「七緒ちゃん、息抜きにキスでもしようか?」
いつものように少しフザケて彼女−−伊勢七緒にちょっかいを出すのは上司の京楽春水だ。
ニコニコしながら彼女に近づくと、彼女は書類で顔を叩く。
「何が『息抜きにキスでもしようか?』ですか。
雌猫とでもしててください」
「こっちは忙しいんですから」と七緒は忙しなく動く。
その様子を見て、京楽が一つ思いつく。
「じゃあ、キスしよう七緒ちゃん」
「はぁ?あの、私の話、聞いていらっしゃいましたか?」
「聞いてたよ……。テキパキ動く七緒ちゃん、猫みたいだからさ……黒猫。
可愛いなァ」
京楽に言われ、七緒は自分の姿を見てみる。
確かに死神袴で黒髪だから黒いのは納得である。
だが、正直どこが猫で、どこが可愛いのか見当もつかない。
だいたい、ここまでキスにこだわる理由も。
と考えている内に京楽は七緒を背後から抱きしめている。
「隊長、どうしてそんなにキスしたいんですか?」
京楽が考える素振りをする。
きっと何も考えていないのだ。
だから、すぐに京楽は答える。
「記念日だから?」
「はい?」
七緒の記憶に今日が記念日などということは少しも残っていない。
京楽はニコニコと笑って七緒を見つめている。
忘れたとは言えず、七緒は京楽との過去を必死で思い出していく。
それを見ながら京楽はそんなモノはないよと内心ほくそ笑んでいることを七緒は知らない。
「もう、七緒ちゃんわかんないの?
毎日が僕達の記念日じゃないのー。記念日はキス」
「………。
ソレ、毎日キスしろと?」
京楽は笑顔で頷く。
冗談じゃないと京楽の腕の中から逃れた七緒の唇に口づける。
驚きの余り七緒の両目が大きく見開かれる。
「今日の分終了ー。また明日もねェ」
七緒の顔が赤く染まる。
コレはきっと京楽しか知らない七緒の姿。
当の七緒は俯いたまま仕事に戻る。
七緒の背中を見ながら京楽は呟いた。
「今日も明日も、君に会えた記念日だよ」
『毎日が記念日なんだ』
END
ーーーーーーーーーーーー隊長、粋だなー。
そして、振り回される七緒ちゃん。
七緒ちゃんFight!!!
タイトルはサイト「Dear.」の鈴木様き頂いたものです。