SHORT

□好きとか知りたくないですか
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貴方は私のことを好きだと言うけれど、

私も貴方の事が好きです。

伝えようとしても貴方は逃げてしまうけれど……

『好きとか知りたくないですか』


全ての仕事を終え、八番隊副隊長の伊勢七緒は隊舎へ戻ろうとしていた。


外に面している通路を歩いていると、ふと星空が目に入ってきた。


一日中忙しくてちっとも気がつかなかったが、もうこんな時刻なのだ。


右肩を回してみるとポキッと骨が鳴った。


自分で思っている以上に身体は疲れているのかもしれない。


最近では多忙過ぎる生活のためか、女であることすら忘れそうである。


また明日も続くであろう気苦労を思うと、自然にため息が出た。


と同時に背後から声がかかる。


「アレ〜、七緒ちゃんお疲れ?」


この状況を考えない腑抜けた声は彼しかいない。


七緒が振り返ると、案の定そこには彼女の上司である八番隊隊長・京楽春水の姿があった。


誰のせいだと内心言い返しながら、あくまで冷静に「今までどこに?」と問う。


京楽は瞬歩で七緒の背後にまわり、彼女の肩に腕を回した。


「綺麗な満開の桜を見てたんだよ。ま、七緒ちゃんの美しさには敵わないけどね〜」


要はサボリだ。


七緒は半ば受け流しつつ、一つため息をつく。


何度言っても懲りない男に小言をいってみる。


「隊長の頭の中が満開なのでは?
おフザケも大概になさってください」


「勿論、サボリもですよ」と七緒が付け足すと、京楽は参った様に肩を竦めてみせた。


そして、七緒とは逆方向に歩き始める。


その方向にあるのは隊首室だ。


今から仕事をやるつもりだと察した七緒が止めようとすると、京楽は振り返りニコッと笑った。


「これはおフザケじゃないんだけどねェ……好きだよ、七緒ちゃん」


七緒は顔が熱を帯びたのが分かり、慌てて俯いた。


が、京楽は紅く染まった七緒の顔を見ていたのだろう、軽く笑った。


そして、直ぐにまた歩き始める。


そこで七緒はハッと顔を上げた。


七緒も彼に言わなければならないことがある。


「京楽隊長…!私は…「もう少し経ったら返事、聞かせてね七緒ちゃん」」


京楽の言葉に七緒の声は断たれる。


七緒は京楽の後ろ姿を見つめながらズルイと思った。


自分はいつも想いを口にするのに、私には口にさせてくれない。


いつもはぐらかせて、最後まで聞いてはくれない。


私の、貴方への想いを受け取ってはくれない。


京楽隊長、貴方は……


「好きとか知りたくないですか?」


七緒の呟きは星空に消えていった。


END

ーーーーーーーーーーーー無駄に長くなりました…。

七緒ちゃんも実は隊長好きだろう…みたいな?


だけど、隊長は隊長で素直になれないんですよね〜。


タイトルは

サイト「Dear.」の鈴木様に頂いたものです。


※他のお話もボチボチ更新します

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