黒子のバスケ

□愛は切なさに溶けて
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『っ花宮…はな…みや…』


校舎裏、古橋はずるずるとしゃがみこむ。


『…古橋?』


その声に顔をあげればそこにいたのは、一番会いたかった花宮。
花宮、そう呼ぼうとした、そのとき。


『お前、ソレどうしたんだよ』


ソレとは古橋が手に持っていたペンダント。


『…ふはっ、わかった。いらないんだろソレ』

『違っ…』

『あ?じゃあなんで壊したっ!?』


びくりと古橋の肩がふるえた。


『はっ別れてもいいぜ別に』

『なっ…』


『別にお前みたいなつまんねぇ女、いらねぇよ』


花宮の顔が本気にみえて古橋は小さく震えながらまた、その場を走り去った。








「…嘘、だろ、そんなの何も知らなかった」


山崎がポツリと呟いた。
古橋は薄く苦笑する。


「…古橋、髪、整えてあげる」


原が少し震えた声で古橋に言った。
そうすれば古橋は頷いて原をつれ、部屋を後にした。
少し短くなって長さがそろっていない後ろ髪。


見ているだけで痛かった。



「花宮に真実を伝えたほうがいい」

「アイツ変なところで鈍感だな、ったく」


残された瀬戸と山崎は、ため息をつけば花宮に電話をかける。


古橋が二度と、あんな風に笑わなくて言いように。








「巧いっしょオレ!自分の髪いじったりするの好きだからさ!」

「すごいな、オレより器用なんじゃないか?」


原はかもね、と笑った。古橋もそれにつられて表情を緩める。
古橋の髪は少し短くなったものの原によって綺麗に切り揃えられていた。



「っ古橋ッ!!!!」


そんなふんわりとした雰囲気をぶち壊した叫び声。
それは確かに古橋を呼んでいて。


「はな…み、や…?」


小さく呟いた古橋が立ち上がったところで壊れそうな勢いで部屋の戸が開けられた。


「古橋ッ!!」


そこにいたのは、いつも浮かべている余裕の表情など微塵も感じられないほど焦った表情の花宮。
しかし古橋がその表情を見ることができたのは一瞬だった。

なぜなら花宮が古橋を引き寄せて抱きしめたからである。
ちなみにこの時点で空気をよんで原は部屋から退散していた。


「はなみ、」

「ごめんな、ごめん古橋ッ!!!」


力を強めてくる花宮の腕、それは酷く震えていて演技でも何でもないことがわかる。
これは花宮の本心なのだ。


「ごめんっ嘘だお前が好きだお前じゃなきゃ嫌だ!お前がいい!」

「…うん、オレも花宮が好き花宮がいい」


その言葉を聞いた花宮はそっと古橋から体を離して自分よりも少し下にある顔を愛しそうに見つめた。
古橋もまた、花宮を見つめる。そして手を延ばしそっと頬を撫でた。


「なあ古橋、キスしていい?」

「…ああ」


古橋が目を閉じれば花宮は少し笑って顔を近づける。


どちらの涙かはわからない、しょっぱい味がした。







ちなみに花宮の力により男子バスケ部の女子マネの数は激減したとか。



end




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